あったかい感触が頬や耳元に下りてくるとそのまま唇に移動する。


「ん…。」


どんなに意地悪そうに言ったって。
どんなに強引にしてきたって。


いつも結局優しいキスがふってくる。


私が怖がらないように。
私が安心できるように。



優しく髪を撫でられてついつい心地よくなってしまった。



ゆっくりと離れていく唇に。




もっとしたいななんて思ってしまった。




「っ!?」



総司の顔が赤くなって、どうしたんだろうなんて考えていると総司は視線を逸らす。




「総司?」

「なんて顔してるの、美月…。」

「え?」

「…もっとしてほしそうな顔してる。」

「!?」




ぼんっと音がでそうなぐらい顔に熱が集まった。
私、そんな顔してるの!?
ってかどんな顔!?



恥ずかしくなって総司の腕をすりぬけて散らばったお菓子を集めた。



「は…はは早く行かないと!みんな待ってるよ。」

「ねえ。」



後ろから腕を掴まれる。
絶対笑ってる。
絶対意地悪な顔してる。
見なくたってわかる!!!



「っ…ほっ本当はもう少ししたかった…気もするけど今は行かないとっていや、あの、違う。そうじゃなくて…。」



落ち着け!
落ち着くんだ私!
何墓穴ほってるんだ!


もっとしたかったなんて。
はしたない!いかんぞ!私!


相変わらず腕を離してくれない総司のほうをゆっくりと振り向いた。
薄暗い部屋だというのに総司の顔が赤いままなのがよくわかる。
あいている手で口元を覆って顔を隠しているけど。
あれ?照れてる?



「…それわざとじゃないんだよね?」

「え?何が??」

「帰る。」

「は!?」

「一緒に帰る。今すぐに。」

「何言って…。」

「もう無理。二人になりたい。…シたい。」




!?
あのー。
それはー。
つまりー。


そういうことですよね。




「えっとー…。」

「美月は嫌だ?」

「嫌じゃない!!!」



食い気味に声をあげる。
それにまた総司は驚いたように目を丸くした。

「嫌とかじゃなくて…初めてだから。ちょっと怖いし。どうしていいかわかんないし。あと…。」



思わず俯いてしまう私の頭を総司が優しく撫でた。




「あと?」

「…総司に嫌われたくない。」



だってスタイルがいいわけでもないし。
めちゃくちゃ可愛いとかでもないし。
何より無知だし。いや、それは勉強しろって話なんだろうけど。
なんか変なことしちゃったらどうしようとか。
でも何もできないのもよくないとか聞くし。
いろいろ考えちゃうともうよくわかんなくて。



ぶつぶつと小さく呟いたことを多分総司は全部聞いてくれたんだろう。



「嫌うわけないじゃない。そんなことで。」

「ほんと?」

「美月がいいんだよ。美月じゃなきゃ駄目なんだよ。…もう。」



ふわりと総司の香りに包まれた。
私の髪にすりすりと顔を埋めている。



「どうしてそんなに可愛いかな。」

「総司、目、腐ってる。」

「はいはい。…初めてだからとか何も知らないからとか考えないで。」

「でも。」

「だって。」

「?」



髪から顔を離し、真っすぐに私を見る総司の口元がゆっくりと弧を描く。



「僕の好みにできるじゃない。」

「ぎゃああああ!」





邪悪な顔をしていらっしゃる!
どうなるの!
どうなるの私!?



「ちょっと、彼氏にむかってあげる叫び声じゃないよね、それ。」

「だって!」

「やっぱりこっそり抜け出そう。」

「いやいやいや!」



身の危険を感じたその時。






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