「おせーよ、二人とも…。」


ロッカーから出てきた私達に平助が何か言いかけたが口を開いたまま硬直した。
頭にかぼちゃの飾りをつけて、オレンジ色の服を着た平助に思わずふきだす。


「へ、平助。何それかぼちゃのお化けなの??っくくくく!」

「笑うなよ!ってかお前その格好。」

「え?」

「お、いいじゃねえか。二人とも可愛いぞ。」



ふらりと現れた原田さんはドラキュラの格好をしていた。
似合いすぎる。



「原田さん、似合ってますね。」

「そうか?」

「本当にドラキュラみたいですね。」

「それじゃあ。」



原田さんが素早く私の後ろにまわりこむと耳元に声をおとした。




「美月の血を吸ってもいいか?」

「ち!近いんですって!!!」




声が無駄に色っぽいんですよ、先輩!
あ、無駄にとか言っちゃった。




「おい、原田。そいつをからかうな。」



後ろから声がして振り向くと土方さんが立っていた。


「あれ?土方さんはコスプレしないんですか??」

「俺と斎藤は準備担当だ。裏方にまわるから仮装はしねえよ。」

「ずるっ!私もそっちがよかったー!」



土方さんと横にいた一君は私服だった。
手に書類を持って何かチェックをしている。


「美月、雪村、とても似合って…。」


一君が何かを言いかけたのを遮るように大きな声が横から飛んでくる。


「美月ちゃん!千鶴ちゃん!どうだ!?」

「……。」

「……。」




声でわかります。
永倉さんですよね。


白いシーツをかぶっていて、何やら顔のような絵が描かれているんだけど。


おばけ?


喋らなかったら誰が入ってるのか全然わからないよ。




「いいと思います。」

(千鶴!なんて優しい子!!!)

「だろー!ガキ共びびって泣いちゃうぜ!?」

「泣かせてどうする!」



白い布をはためかせながら、永倉さんは近くにいたかぼちゃ平助にタックルしていた。
ぎゃーぎゃー騒いでいる二人に再び土方さんの雷が落ちる。




今日は大学近くの公民館でハロウィンパーティが行われるのだ。
近藤さんが通っている剣道場が主催していて剣道を習っている子供達にお菓子を配ったり、ゲームをすることになっているらしい。





剣道場がハロウィンパーテイってどうなの??
ハロウィンは海外のイベントなのに。





そんな私の考えはみんなの頭によぎらないのか。
近藤さんの頼みでパーティの手伝いをすることになったんだけど。



それのせいでコスプレするはめになったってわけだ。



ドラキュラにおばけにカボチャに魔女に黒猫。
ハロウィンっぽいといえばハロウィンっぽいのかな。
子供がやったほうが可愛いと思うんだけどね。







×
- ナノ -