「っ…!」

「綺麗だね。」



総司はすぐに離れて打ちあがる花火を見て笑っていた。


正直花火どころじゃない。


だって。


今。



キス。




「どうしたの?美月。」

「どどどどうしたじゃなくて!みっみんないるから!!」

「みーんな、花火に夢中でこっち見てないよ、ほら。」



花火から一番離れていた私達を見ている人は確かにいなかった。
一番近くの土方さんも近藤さんと何か話しながら花火を見ている。


「でも…。」

「でもそうだね、そんな赤い顔してたら、何かあったのって言われちゃうかもね。」

「え!?」

「可愛い、美月。」

「っ〜〜〜!?」




ずるい。
なんかずるい。



私ばかり照れて。
私ばかり焦って。



いつも総司は余裕なんだ。









「打ち上げ系全部終わったぜ??」

「いやー最後はやっぱり線香花火対決だろ!!」

「…線香花火対決ってなんだよ。」

「誰が一番残るかってやつか?」

「そうそう!」


永倉さんが線香花火をみんなに配り始める。
確かに誰が最後まで残るかって話になるよね、いつも。

「…情緒とかそういう言葉はないのだな。」

一君が目を細めて永倉さんを見るが当の本人は気が付いていない。
そもそも彼に情緒を求める方が…失礼しました。



「では、せーのでつけましょう!」

「「「せーの!!」」」



一斉に花火に火をつけ。





























旅館までの帰り道。


みんなが騒ぎながら帰るのを一番後ろから眺めていた。



「新八さんが勝つとかありえないんだけど。」

「総司おしかったね。」



最後は永倉さんと総司が残ってたんだけど。
後少しというところで総司の線香花火は落ちてしまった。



「一番情緒とかからはなれてそうじゃない。」

「ふふっ。確かに。」



永倉さんを見るとたくさん飲むぞー!とか叫んでる。きっと今から男子部屋にみんなで集まって酒盛りだ。



「でもまあ、楽しかったかな。」

「私も!みんなでわいわいやるといいね。」

「花火大会は二人が良いな。」



突然総司が手を握ってきた。
みんながいるのに!ってまた焦ったけど、私達が一番後ろだし、暗いからわからないかな…と思って握り返す。



「うん。」

「浴衣着て行こうよ。」

「うん。」




浴衣来て花火大会とか。



憧れる!!!!!



しかも総司と行けるなんてドキドキするな。



総司浴衣似合うんだろうな。




「顔がにやけてるけど?」

「え!別に。」

「楽しみ?」

「うん。」

「僕もだよ。」



そう言って笑う総司に胸がきゅんとした。
付き合ってから総司は優しく笑うようになったから。

ドキドキして。
きゅんとして。
少し苦しくて。

これは好きが溢れてるから?




総司も同じふうに思ってくれてるかな?



ドキドキしてくれてるのかな?
きゅんってしてくれてるのかな?




「どうしたの?美月、さっきから変…。」



握った手を引っ張って。
私の方へ引き寄せて。
少し背伸びして総司にキスをした。




「っ!?」

「あ、あの…したくなりました!」



なっ何を言っているんだ!私!!!

みんなが近くに居るのに。
さっきは総司に怒ったくせに何してるんだ、私!!!!!



だけど。
なんだかすごくしたくなって。
苦しかったんだもん。




「………。」



あれ?総司、顔が赤い?



「あの…。」

「ドキドキした。」



バツが悪そうに視線をそらしながら呟く。



「え!?」

「いきなりずるいよね、美月は。」

「ごっごめん。」

「怒ってるわけじゃなくて。」



こつんと頭をつつかれた。



そこには頬を赤くして、やっぱり優しく笑う総司がいた。




「嬉しかったんだよ。」













そのまま私達は旅館へつく直前まで手を繋いで歩いていった。


少しだけ。


自分から何かするということを。



覚えた夏の日。






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