近くのスーパーでお酒とつまみを買った。
まっすぐみんなの所に向かうと思いきや。


「美月、こっち。」

「みんながいるのは右だよ?」



総司は黙って左へ進んだ。
広い公園であちこちに花見をいている人がいる。
学生だけではなく社会人もいるようだ。


「ほら。」

「わぁ!」


総司が指さした先にひときわ大きい桜の木があった。灯りが少ないせいか人はほとんどいない。


「綺麗…。」

「こういうの好きでしょ。」

「うん!」


思わず桜の木の下まで走った。
ぼんやりとした灯りに照らされて神秘的に見える。


「綺麗だな…。お花見なのによく見てなかった。」

「花より団子だからね。」

「う…うるさいなぁ。」

「みんなね。」


そう言うと総司は買ったばかりのお酒をあける。


「あ、こら、未成年。」

「大丈夫、ノンアルコール。…もうすぐ僕達も二十歳だけどね。」


そう言うと総司は座り込んだ。
私もつられて横に座る。


「戻らなくていいの?飲み物足りないんじゃ…。」

「まだ足りるよ。飲み会始まったばかりじゃない。」

「じゃあなんで?」

「からまれてたから。」

「?からまれてなんかないよ、新入生と話してただけ。」

「…。本気で言ってるの?」

「変な総司。」

「美月ってさ、変なとこ鋭いのに、こと恋愛に関しては鈍いよね。」

「はぁ?」

「さっき君、口説かれてたんだけど、彼に。」

「え?嘘だ!」

「気付いてないの?彼も気の毒だね。でも。」


静かに総司が近付いてきた。


「え…え?え?」

「≪鈍感≫って思わせぶりともとれるから気をつけてくれる?」

次の瞬間桜が見えなくなった。

総司の腕の中だ。

「みんなに教えておいたほうがいいのかな。僕のものってこと。」

「!?!?」

え。総司が…まさかのヤキモチ?


「やいてない。」

「エスパーか!?」

「やいたことなんてないからよくわかんない。」


腕の力が強くなった。

「ただ、おもしろくない。」

それってヤキモチなんじゃないの?
って思ったけど。
抱きしめられて幸せだからま、いっか。

静かな空間。
キラキラゆらめく桜の下で
私たちはしばらく抱き合った。






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