「って言うのは冗談。」

「え?」

「僕は美月が大丈夫って思うまで待つから。焦らないでいいよ。」

「総司。」



私は幸せ者だ。
こんなに私のことを考えてくれる人と付き合えたんだから。


「美月、こっちきてくれる?」


そう言って総司は私の手をひいたまま河原のほうへ歩き出した。


「どうしたの??」

「美月と見たいものがあるんだよね。」



総司についていくと、総司の言葉の意味がわかった。


「わぁ!!」

「良かった。見られた。」



辺りに淡い光がふわふわと浮いている。
水辺にとまっている光。
あちらこちらをいったりきたりする光。



「ホタルだ。」

「近藤さんが見られるはずだから夜に河原へ行ってごらんって。」

「そうなんだ!綺麗だね。」

「ふわふわ飛んでるのがオスでじっとしてるのがメスらしいよ。」




総司が話した瞬間、ふわふわと一匹私の肩にホタルが止まった。



「じゃ、この子は男の子だ。」

「そうだね。」



すっと総司が手にホタルをのせる。総司の手の中に淡い黄金色の光が満ちる。


「ありがとう、総司。ホタル見せてくれて。とってもいい思い出だよ!」

「良かった。僕もいい思い出できたよ。」

「もう少し見たら戻ろうか?みんな心配するかも。」










「おーい!総司!?美月!?」








「噂をすればお邪魔虫。」

「総司。そんな言い方。」




総司が眉間に皺をよせる。
コテージのほうから平助だけじゃなく他のみんなの声もして、しかも段々近づいてきた。


「何してんだー??」

「ホタルがいるんです!」

「ホタル!?見たい見たい!」



バタバタと河原へ向かってくる音がした。


「すごいですね。」

「あぁ幻想的だな。」



静かに見ている一君と山崎君とは対照的に。



「おぉー!手の中に止まったぞ!」

「すっげぇ!新八っつぁん!写真とっていい!?」

「おいおい、フラッシュたくなよ。」



騒がしい三人。




「賑やかすぎてホタルがびっくりするね。」

「ほんとだね。」




思わず総司と笑った。




もうすぐ夏がくるけれど。
このメンバーでまた素敵な思いで作れたらいいな。









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