いつの間にか一君が黒ひげをセットし、剣をさした。
あれ?意外と楽しんでるよね、一君。




次々とみんなが剣をさしていき。




――パーンッ!



「あ。」

「おっ!総司だ!!どれどれーっぷっ!!!!あははははは!」

「どうしたどうした平助。…ぎゃははは!!!!」


総司がさした剣を平助がすばやく取り上げると笑いだした。
隣にいた永倉さんも大笑いをしている。


「ちょっと、二人とも。読んでくれないとわからないんだけど?」

「っくく、このゲーム終了まで赤ちゃん言葉で話すってさ。」

「はぁ!?」



総司が。
赤ちゃん言葉???



「っく…。」



左隣から小さく声がした。
隣をみると一君が俯いてる。
だけど、肩が震えてるよ、笑ってるこれ絶対。


「おい総司、ゲーム終了までだぞ。」


目がすわってる土方さんも指令だけはちゃんと聞いているようで。
隣にいる総司が明らかに嫌な顔をした。


「おいおい、喋らないってのはなしだぜ?つまんねぇからよ。」

「はぁ。」



総司が深くため息をつく。
が、何か思いついた顔をして土方さんを見た。


「土方しゃーん。」

「あ?」

「お酒足りてましゅかー?まだ飲みましゅか??何かとってきてあげましゅかー??」



…。



……。




なんだろう。
赤ちゃん言葉なのに。
総司の罰ゲームなのに。


完全に土方さんが馬鹿にされているようにしか聞こえない。



「ははっ。あいつらしいな。」

「おい総司、てめぇ俺のこと馬鹿に…。」

「してないでしゅよー??さ、ゲームしましょうね。」

「ぷっ、完全に馬鹿にしてるよ。」



総司が黒ひげをセットし、山崎君に回した。
山崎君、一君と剣をさしていき…。



「よしっ!」


私の番だ。



――パーンっ!



「あ。」



ついにやってしまった!
私、なんの剣をさしてしまったんだろ?



「何なに?あー右の人とゲーム中、手を繋いでる。お、俺か?役得だなぁ。」



原田さんがにっと笑い、私の右手をとった。



「わ、原田さん!?」

「仕方ねぇだろ?ゲームなんだ。」



でも。
恋人つなぎする必要ないと思うんですけど。

原田さんの手大きいな。それにあったかい。


「ん?どうした?」

「いえいえ、何でもないです。」



男の人と手つなぐなんて総司以外で初めてだ。
ってか、今日一気にいろいろあったようでなんだか疲れてきた。
慣れてないもん、こんなこと。



「そろそろ最後にするか?」

「おぉ、そうすっか。」



サクサクとみんなが剣をさしていき、一周終わる。二周目の原田さん、永倉さん、平助を過ぎていき。




――パーンっ!



「俺か。」

黒ひげを高く飛ばしたのは土方さんだった。

「指令は目の前の人とポッキーゲーム。目の前って…。」




じーざす。


わたしじゃないですか?



なんすか、ぽっきーげーむって。


合コンってやつでやると噂のあれですか?


やだぁ!!!!









ふらりと土方さんが立ち上がり。
テーブルにたまたまあったポッキーを一本とる。





「土方さん?」

「ゲームだ。」

「えぇぇええ!?」



いつもなら絶対こんなことしないじゃないですか!
目覚まして!土方さん!!!!!



「ほら、口あけろ。」



ひぃいいい!!!




口をあけない私に無理やりチョコ側をさしこんできた。
土方さんも反対側を口に入れる。
もうこれだけで近い近い近すぎる!!!


「ちょ!土方さんずる…。」

「どこまでやるつもりだよ!?」


少し離れたところから平助と永倉さんの声が聞こえる。
助けてよ、二人とも。


「男なら最後までだよなー土方さん。」


煽らないでください!原田さん!!!



「「…。」」


あれ、一君と山崎君が怖い顔してる。
見てないで止めて!



パキパキと土方さん側から音がする。
そりゃ私は全く進んでないし、もはやチョコはとけて味もしなくなっているけれども。





(無理だよー!!!)




土方さんの綺麗な顔が少しずつ近づいてきて。
どうしていいかわからなくて思い切り目を瞑った。





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