―十分前 平助視点―
大量のレポート提出も無事終えて、次の授業もなかったから、休憩しようかと思って俺はリフレッシュルームに向かったんだよ。
そうしたら一君があの席に座っててさ。
「一君じゃん!次空きコマなの?」
「平助か。あぁ、休講になった。」
「ラッキーじゃん。俺も次空きなんだよね。」
そう言いながら俺はのんびり休もうかと思ってアイス買って、一君の横に座ったんだ。
で、二、三口食べてから一君の様子が変なことに気がついてさ。
静かっていうか。
いや、一君はいつも静かだけど、いつにも増して静かな感じがして、なんというか暗いって思ってさ。
「一君、どうかした?元気ないみたいだけど。」
一君は窓の外をぼーっと眺めててさ。
俺も何かあるのかって思わず一緒に外見たんだけど。何もなくて。
「どうしたんだよ、一君。」
「平助。」
やっと口開いてくれたと思って俺は次の言葉を待ったんだ。
アイスがとけそうになっても無視して。
「どれだけ思っても…なかなか報われないものだな。」
「へ?」
俺のアイスがとけて手に落ちたよ。
あわてて口に詰め込んだけど。
「思うだけではだめなのだろうか。」
「ちょっ・・一君!?」
「愛情を注げば、いつか報われると思っていたのだが。」
え?
これってまさか。
一君の恋愛相談!?
「あのさ、一君。その…相手って。」
おそるおそる一君に聞いてみたんだけど。
「違う方法も試すべきか…すまない、平助。少し考え事をしたいから一人にしてくれないか?」
「え・・あ・うん。」
そう言われ、俺は部屋を出てきた。
「で、今に至ると。」
総司が相変わらず視線は一君にやったまま呟いた。
「そうなんだ。」
「ぼーっとしているかと思うと時々思い出したかのようにノートに何かメモしてるんだぜ。ちょっと不気味だよな…斎藤。」
永倉さんが心配そうというより不安そうな表情で一君を見ている。
「かなり思いつめてんなぁ…。」
原田さんもため息をついて言った。
女の子の扱いはプロ級じゃないですか、助けてあげて下さいよ。
「一君、好きな子いたんだ。知らなかった。」
(やっぱり気付いてないと思ったけど…。もう心配だなぁ。)
(もしかして美月のことか?一君いつも自分から話しかけるもんなぁ。)
(まさか斎藤!美月ちゃんを狙ってるのか!?)
(多分美月だよな。厄介な敵だな、斎藤は。)
「報われないってことは相手に彼氏がいるんかな?」
一君程の人が報われないなんて…。
どんな素敵な人なんだろう?
「何!?彼氏!?」
私の言葉に永倉さんが過剰に反応を示す。
おかしいこと言ったかな?
「それは聞いたことないな。」
「い、いないんじゃないか?」
「そうかな。いるかもよ。」(僕だけどね)
原田さんや平助、総司が続く。
あれ?みんな相手知ってるの?
「じゃあその子に好きな人がいるのかな。」
「ただ単に相手が鈍くて伝わらないだけだと思うけど。」
「違いねぇな。」
「そうだな。」
「一生伝わらなくていいけど。」(みんなの思いもね。)
「なんか言ったか?総司。」
「いや。」(僕達の邪魔しないでよ。)
なんか総司から不機嫌オーラがでているけどスルーして話を進める。
「ねえ、やっぱりみんな相手知ってるの?」
「あー…。」(お前とは言いたくない。)
「俺も直接聞いたことはないぜ。」(美月ちゃんだと思うけど)
「なぁ美月。お前最近斎藤と二人になったか?」
原田さんがいきなり聞いてきた。
一君と二人?
「うーん。部活の時少し話したり。あ、レポート教わったりするぐらいで。」
「へぇ。」(いつ二人でレポートしてたの)
「う…。」(ごめんなさい。)
総司の視線が痛い。
いや、でも一君だよ?
別に気にしなくていいじゃん!
「でも一君、その子といつ会ってるんだろう?」
「え?」
私の言葉に平助が目を丸くした。
「だって、授業ってだいたい私達の誰かと一緒で、学校終わったら部活で。部活の後もみんなでご飯食べてたりしていつもみんな一緒でしょ?」
「まぁな。」
「確かバイトも女の子いないって言ってた気がするしこんなに一緒にいたら気が付きそうなんだけどな、一君の好きな子。」
「あー。そうだなぁ。」
あれ?
なんかみんな視線が泳いでるけど。
「他の学部かもしれないし、たまたま見かけて好きになったのかもよ?メールとかしてるかもしれないし、僕達が気がつかなくてもおかしくないんじゃないかな?」
「そっかぁ。」
総司に言われ納得する。
そうだよね。今時メールで連絡を取り合うだろうし。
「よし!一君の恋を応援しよう!!!」
「「「「は!?」」」」
「え?だってみんなだって一君にうまくいってほしいよね??仲間だもん!」
四人が私から目をそらす。
あれ??なんで?
「一君があーやってがんばろうとしてるし。そっとしておこうぜ。」
「人の恋路に入るもんじゃねぇからな。」
「あぁ。男なら一人で戦うもんだぜ。」
「えー!?なんでみんなそんな冷たいの!もういい、私だけ行く!」
「ちょっと!美月!?」
みんなを押しのけて私はリフレッシュルームに入った。
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