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好きな人の幸せが一番だ。
あなたが笑ってくれるならそれで私は幸せです。
たとえ隣にいるのが私じゃなくても…。
それでも私は幸せです。
















「おい、これ。」

「何ですか?土方さん。」

「千鶴と二人で食え。貰いもんだ。」


そう言って土方さんは彼の部屋へと入って行った。
渡された包みを開けるとそこにはおまんじゅうが二つ。
包みを閉じ、そっと抱きしめる。


「自分で…渡してくださいよ。」


聞こえないように呟いて私は土方さんの部屋から離れた。

新選組は男所帯。家事が行き届かないという理由で女中を募集していたのを知り合いから聞き仕事をさせてもらうようになった。
主に料理と洗濯、掃除だ。そして客人として屯所にいる千鶴ちゃんの話相手もしている。
彼女はある理由があって屯所にいて、男装して過ごしているから可哀想だと近藤さんに頼まれたのだ。

屯所の掃除をしていて土方さんの部屋の前の廊下を拭いていた時だった。
外から帰ってきた土方さんは私に声をかけるとおまんじゅうをくれて休憩時間を与えてくれたのだ。
こういうことは時々ある。
多分土方さんは千鶴ちゃんが好きなんだ。
彼女は素直で、だけど芯があって。可愛らしい。
私の仕事も手伝ってくれるし気が利く。あんな素敵な女の子なかなかいないもん。
土方さんが好きになるのもわかるんだ。

だけど自分でもっと積極的にいかなきゃ。
千鶴ちゃんは人気があるんだよ。
この前は沖田さんにちょっかいだされてたし。あの様子だと斎藤さんも千鶴ちゃんが気になってる。

もたもたしてられないんですよ、土方さん。


いつも忙しくて、寝る間も惜しんで仕事していて…
みんなのことよく見ていて、誰よりも新選組のことを思っている土方さん。
惹かれてしまうのは仕方ない。
だけど彼が選ぶのが違う人だというのなら…
私は彼の幸せを願いたいの。



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