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何だって信じたいの。
苦手な勉強もダイエットも、少しだけどお化粧も頑張ったら。
あとできることなんて神頼みぐらいじゃない。
だから、お願い。
神様、私の思いを届けてください…。





――二丁目の神社って縁結びの神様がいるんだって。そこに毎日お参りにいくと神様が恋を叶えてくれるらしいよ。



友達がそんなことを言っているのを聞いて私は放課後部活が終わるとすぐに家とは反対方向の神社へ向かった。
恋のおまじないっていつの時代も流行るよね。
消しゴムに好きな人の名前を書いて使い切るとか…うんうん、小学生の時によくやったな。
でもさすがに高校生にもなるとみんなパワースポットにお願いするわけか。

神社につくと早速、手を合わせて神様にお祈りをする。
うーんうーんと唸り声をあげている私の後ろで小さなため息が聞こえた。



「で、お前はいきなり何してるわけ。」

「神頼み。」

「そりゃ見てりゃわかるけどさ。」


振り向くとそこには平助が立っていた。
私の隣まで歩いてくると近くに貼られていた二拝、二拍手、一拝という参拝の作法が書かれた紙を指さした。


「いきなり拝むんじゃなくて、あーいうのしなきゃいけないんじゃねえの?」

「ああああ申し訳ありませんでしたー!神様!!!平助に教わるなんて不覚です!」

「どういう意味だよ!」


平助のくせに!平助のくせに!
私と成績は同レベルなのにまともな指摘されても真っすぐ受け取れない!

私と平助はいわゆる幼なじみってやつで、生まれた時から一緒だったと言っても過言ではない。
幼稚園も小学校も中学校も、そして高校まで一緒だ。クラスが違うことはあったけどなんだかずーーーーーっと一緒にいる家族みたいなものだ。
友達とうまくいかない時も、誰かに片思いをしている時もいつも平助は隣にいてくれた。


特に恋愛相談はよくしていて、好きな人が出来る度に平助に相談していた。
一年前もクラスメイトの男の子に告白するかどうするか悩んで相談してたっけ。


『ま、ふられたらなんかうまいもん奢ってやるからさ。』


いつもそんな風に言って笑って送りだしてくれる平助。
今思えば、帰る場所があるから戦いに行けていたってわけで。


「で、お前は何で俺らの家と反対方向のこんな神社まで神頼みしてんだよ。」

「そ…それは…。」


言えない。
ここが恋愛成就の神社で、毎日拝みに来たら恋が叶うって言われてるなんて…。
だってそんなこと言ったら…

『え!?お前好きな人できたの?誰だよ??』

って聞かれるのは間違いないんだ。
その流れは今までに何度もあったんだから。

今までは良かったの。すぐに相談したかったから。でも今は。



ずっと相談事をしていた
ずっと家族みたいに思っていた


平助のことが好きだなんて…言えないよ。




「ここってさ。クラスの女子が騒いでた神社じゃねえの?」

「うえ!?」

何かを思い出すように平助が目を閉じて呟く。
まさかあの会話…平助も聞いていたの!?


「確か…恋愛成就の…。」

「わーわーわー!!!」

「お前神社で騒ぐなよ…。じゃあやっぱりここか。ん?ってことはさ、お前…。」

「いいいいいい言えません!!!」

「何だよ、好きな奴できたのかよ…。何で言えないわけ?」


いつも真っ先に言いにくるじゃんとか言わないでよ。
神社の石段に座りこんで平助は携帯をいじりはじめた。メールチェックだったのか、すぐにポケットにしまいこむ。


「お…おまじないなの!」

「おまじない?」

「ここにね、毎日通って恋が実るようにお祈りすると神様が叶えてくれるんだって。」

「ふーん。」

「で、相手のことは他の人に相談しちゃいけないの!!」

「何だそれ。」


平助の言うとおりです。何だそれだよ。そんな決まりごとないよ。
だけどまさか本人に言えるはずもないし、苦しいけれどこの言い訳を通すしかないんだ。


「ってか何で平助こんなとこまでついてくるのよー!」

「何でっていつも一緒に帰ってんじゃん。家近いし。それにお前が少し遠回りしてダイエットするのとか言うから…。」

「だから一緒にこなくても…。」

「お前な、もう七時だぞ。危ないじゃん。…ほら、帰るぞ。」

「う…うん。」


そうやって優しいところは昔から変わらない。
なのに私はそれが当たり前になっていたんだね…。
今更気付くなんてさ。
馬鹿だよね、本当に。


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