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学校の近くにあるアイスクリーム専門店に立ち寄り私達は食べながら家へ向かった。
久しぶりに行くと期間限定とかに出会えて嬉しくなる。

「…名前ちゃん、それ美味しいの?」

「え?」

「すっごく嬉しそうな顔してるからさ。」

「っ…。」


嬉しそうな顔をしているって言ってるあんたが何でそんな嬉しそうなわけ?


「と、いうことで一口ちょうだい。」

「あ。」


返事をするよりも早く、沖田が私のアイスを一口食べた。


「ちょっと!!!」

「あ、美味しいね。今度これにしよ。」

「私いいなんて一言も!!」

「あはは。ごめんごめん。僕のあげるから許してよ。」

「いら…。」


いらないと勢いよく答えようとしたけれど、沖田が食べているのは最後の最後までどっちにしようか迷ったフレーバーだった。


「いただきます。」


ぱくっと一口貰うと口いっぱいにチョコの味。
ああ、美味しい。次はこっちにしようかな。
ふと沖田を見るとまた驚いたような顔をして私を見ていた。


「何よ…。」

「いや、なんか今日の名前ちゃんいつもと違う。」

「た…食べ物に目が眩んでるとか言うんでしょ、どうせ。」

「違うよ。可愛いと思っただけ。」

「かっ…!!??」


ほらまた。
何でそんな風に笑うの?
いつものお得意の営業スマイルじゃなくて。
何でそんな優しそうに笑うの?


「名前ちゃん。」

「はい!?」


突然名前を呼ばれて思い切り返事をしてしまう。
すると今度は沖田が真剣な顔をした。


「やっぱり…君にとって僕はそういう存在になれない?」

「は!?」

「告白してから一ヶ月ぐらいたつからさ。ちゃんと聞きたいんだ。」

「それは…えっと…。」


何を焦ってるの、私。
お断りするいいチャンスじゃないか。
きっぱり言ったらこうやって毎日帰ることもなくて、かまわれることもなくなって。
今まで通りの生活が戻って…。


「君が嫌ならきっぱり諦めるよ。もうやめる。」

「沖田…。」


なのにどうして言えないんだろう。
断れば全て終わりなのに。
もしかして、断りたくないの?嘘だ、そんなこと。


「名前ちゃん…。」


沖田が目の前に立った。夕日を背にしているせいで表情はよく見えない。


「嫌なら避けて。全力で。」

「は?」


そう言うとゆっくりと沖田がかがむように私に近づいた。

あれ、これって…。

相変わらず逆光で表情は見えないけれど…キスされるの!?

ちょっと待って待って!無理無理!

私の肩にある沖田の手を払おうと思うのに上手くできなくて逆に掴む形になる。
何で?私これじゃまるで…。

でも沖田のあの笑顔見たら、振り払うことができなかった。


(なるようになれ…。)


ぎゅっと思い切り目をつぶって覚悟する。
でもいつになっても訪れるであろう感覚がこない。


「とけちゃうよ。アイス。」

「え?」


その声に目を開けると沖田がまた私のアイスを一口食べていた。
そしてその後すぐに私を見てニッと笑う。


「えっと…。」

「あれ、期待しちゃった?もしかして。」

「は!?!?」

「さすがにちゃんと返事もらう前にキスできないかな。名前ちゃんそういうの慣れてなさそうだし。」

「ちょ…あの…。」

「だけど拒まれなかったんだから、僕もそれなりに期待していいってことだよね。」


うんうん頷きながら笑ってる沖田が憎い。
つまりこれ、試された!?

「一ヶ月前より確実に距離を詰めたってだけで今はいいかな。ほら、アイスとけるよ。」

「お…おき…。」

「テスト終わったらどこか遊びいこう。君の好きなところでいいからさ。」

「話をき…。」

「ほら、アイスとけるってば。僕が食べちゃうよ。」

「沖田ー!!!!」


私が爆発するのがわかっていたかのようにひょいと私の前から移動する。
そして一歩二歩と前に走り出した。
私もすぐに追いかける。


「あんた!私のこと試したな!!最低最低最低!!!」

「試したなんて人聞きの悪い。聞いただけじゃない、君の気持ち。」

「待ちなさいよ!止まりなさい!!」

「止まったら怒るんでしょ。」

「当たり前!!!」



私が全力で追いかけたって追いつくはずないんだけど。
しばらく走り続けたら沖田はぴたりと止まって振りかえった。
こっちが息切れてるのに涼しい顔しているのがさらに腹立たしい。


「ねえ、名前ちゃん。」

「何よ。」

「僕は君のそういう単純で真っすぐな所好きだよ。」

「っ!?」

「もっとこれからお互いのこと知っていけば君の気持ちもどんどん変わると思うな。それに今でも君は僕のこと、少し気になってるでしょ?」

「あんた自意識過剰もいい加減に…!」

こうやって騒いじゃうから図星とか思われるんだろうけど…。
沖田は私の反応を見て笑ってこう言った。


「認めちゃいなよ。」


ちょっとだけ、認めてしまいそうになる自分に一番腹が立つ!!!


―認めてしまえば―



(素直じゃないところも可愛いけどね。)

(うるさい、ばか、しね。)

(もー口悪いな。一君に怒られるよ。)

(別に怒られないし。一は私の味方だし。)

(俺の幼なじみは素直じゃないのが玉にきずだが悪い奴じゃない。よろしく頼むって言ってたよ。)

(うーらーぎーりーもーのー!!!)








nextあとがき


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