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「と、いうことで…私達付き合うことになりました!」
「げほっ!」
「…。」
「…。」
「…。」
てへっと可愛らしく言ったつもりなのに何故か隣に座っていた斎藤はコーヒーを吹きだし、目の前にいた千と平助と沖田は目を丸くした。
あれ?どうして?
別に何もおかしいこと言ってないよね。
一定の沈黙の後。
無言だったことが嘘のように…
「「えええええええ!!!!!!!」」
「二人とも静かに、ここファミレスだから。」
千と平助が揃って叫び、沖田がのんびりオレンジジュースを飲みながら他人事のように呟いた。
二人から視線をゆっくりと斎藤へ移すと、そこには。
(ぎゃああああ!黒藤さん降臨!!!!!!)
テーブルに零したコーヒーを静かに拭いている黒いオーラを出した斎藤がいた。
―友達からのレベルアップ―
周りの視線も気にならなくなってきたところで会話が再開される。
といっても主に話しているのは千と平助だ。
「えー!いつからいつから!?いつの間に!?そういうことは早く教えなさいよ名前!」
「もしかしてあの後!?一君すぐ帰ったもんな!良かったなぁ…総司と心配してたんだぜ?」
「え?何、藤堂君それ何のこと?詳しく聞かせて。」
「あ、実はさー。二人が偽物の恋人やめるってなった後に…。」
私が一言も発する隙もなく、平助が千に丁寧に説明しだした。
二人の勢いにただただ見ていると向かい側の沖田がいつもの笑顔で話しかけてくる。
「良かったじゃない。名前ちゃん。」
「え?あ、うん。」
「僕と平助と千ちゃんのおかげだね。ちゃんと相談のってあげたんだし?」
「相談…?何のことだ?」
さっきまで一言も発しなかった斎藤が沖田の言葉に反応する。
いい!いいから!そんなことはどうでも!
私が斎藤のこと好きって気付いて…へこんでたら沖田と平助が千が告白してこいってけしかけたとか…
嫌だそんなこと知られたくない!!
「まあ、一君からも感謝されたいところだけどね。一人で悩んで抱え込もうとかするから僕と平助が…。」
「総司!」
「??どうしたの斎藤。」
「何でもない。」
「ま、つまりは二人とも僕達に感謝してってこと。」
沖田はそう言うとオレンジジュースを一気に飲み干し、次の飲み物を取りにドリンクバーのほうへ歩いて行った。
同時に平助と千の話も終わったらしく、二人がこっちに話しかけてくる。
「それにしても良かったわー。ほっとした。斎藤君、この子変な子だけどよろしくね?」
「ああ、重々承知している。」
「否定しろ!仮にも彼女だぞ!」
「仮でいいのか?」
「よ…よくないです!ごめんなさい!ってなんで私が謝るのよ!」
「良かった良かった。やっぱ一君と名前はそういう感じでいてくれないと俺達も元気でないっていうか…困っちゃうからさ。」
「平助!天使!」
「ちょっ!名前!頭撫でんな!!!」
「やめろ、名前。」
「あら、斎藤君妬いてるの?」
「ち…違う!」
「はいはい、うるさいよ。また視線集めてる。」
「…沖田、それ、何。」
気がつくとドリンクバーから戻ってきた沖田がお盆にいくつか飲み物を乗せて立っていた。