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「土方さん!!!!」

「おい!返事聞いてから襖は開けろ!!!!」


私は叫びながら土方さんの部屋へ飛び込む。
どうやら土方さんはまた出かけようとしていたらしく小さな荷物を持って部屋を出るところだった。


「ち…ち…千鶴ちゃんに…。」

「落ち着け。あいつがどうした?」


私のただならぬ様子に土方さんは私を座らせると自分も目の前に座りこんだ。
息が切れて上手く話せない私を待ってくれているらしい。


「今すぐ千鶴ちゃんのところへ行って誤解をといてください!!」

「誤解…?おい、話が見えねえぞ。ちゃんと説明しろ。」

「土方さんは千鶴ちゃんのことを好きだってこと。ちゃんと伝えてください!」

「…はあ!?」

「そうじゃないと千鶴ちゃんを沖田さんや斎藤さんにとられちゃいますー!!!」

「あのなぁ、俺は忙しいんだ。ちょっと出てくる。休憩ができたなら仕事しろ。」


そう言って土方さんは立ち上がると部屋を出ていこうとした。
私はその足にしがみついて引き留める。


「お…おい!名前!放しやがれ!」

「放しません!」


ずりずりと畳の上を引きずられるように部屋の入り口まで引っ張られる。
いつまでもしがみついている私に呆れたのか土方さんがため息をついた。


「お前な、何で俺が千鶴のこと…。」

「ちゃんと思ってるなら伝えなきゃ!言葉にしなきゃ伝わりません!!」


そうだよ。
思っているのにどうして伝えないんですか。
私は…言えません。だってあなたの思い人を知ってしまったから。
でもあなたはまだ可能性があるじゃないですか。
千鶴ちゃんが誰かを思っている様子はないし、あなたのことは尊敬してるはずだもの。
早く伝えて。
早く幸せになって。
そして早く…私の中のこの思いを打ち壊してください。


そうじゃないと私は…私は…。


「おい、お前何で泣いてんだ!?」

「だって…土方さんに…。」

「俺がどうした?」

「土方さんに幸せになってほしいんですよーーーーーー!」

「名前?!」


私の涙声に土方さんがいよいよ焦り始めた。
一体何をしているんだろう。
出かけようとしている土方さんの足にしがみついて、今すぐ思いを告げに行けなんて。
自分の恋を自ら砕くこの行為に意味はあるのだろうか。


「何で俺が千鶴に好きだなんだ言わなきゃいけねえんだ!?」

「だってっ!っく…土方さん…ひっく…千鶴ちゃんがぁぁ。」

「あああ!もう落ち着け!俺がいつ千鶴のことが好きだなんて言ったんだ!」

「へ?」


違うの?
だっていつもお菓子とかくれて気遣ってて…
話し相手になってやれって私が仕事中でも休ませるじゃないですか。
それだけ大切にしてるってことじゃないですか…。


「お前、どうして俺に幸せになってほしいなんて言った。」

「それは…。」

「さすがに俺でも自惚れるぞ。そういう意味だと捉えていいのか?」


土方さんの言うそういう意味っていうのはつまり…私が土方さんを思っているってことだろう。


「…はい。」

「だったら、お前が…。」

「土方さん?」

ずっと足にしがみついていた私の腕をほどき、土方さんが私を抱きしめた。
突然の温もりに頭が追いつかない。
どうして?なんで?どういうこと?




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