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「名前!!」

「!?」


突然後ろから名前を呼ばれてびくりと体が震える。
だけど声の主はすぐにわかってしまって…。


「平助…。」

涙を拭ってから平助の方を振り向いた。
すると何故か平助は怒ったような顔で私の方へ駆け寄ってきた。

「お前何で先に行くんだよ!もう暗いから危ないって言っただろ!?」

「だ…だって平助が…。」

「遅くなって悪かったけど、いつもお前待ってくれてるじゃん。何で今日は…。」

「平助が、告白されてたから。」

「!?」


俯いて呟くと平助は言葉を詰まらせた。
どうやら私が見ていたことには全く気付いてなかったらしい。


「あれは…。」

「良かったね!可愛い子だったし。平助にはもう神頼みはいらないかと思って一人で来たんだよ。」

「断った。」

「え?」

「断ったよ。好きじゃない奴と付き合えない。」


断った…?
平助の好きな子はあの子じゃなかったの?



「お前は?」

「え?」

「そろそろ言わないのかよ。もう二週間通ってるけどさ。いつまでも通ってたって神様は伝えてくれねえよ?言うのは自分だろ。」

「それは…。」


知ってるよ。
こんなの気休めだってこと。
だけど…怖いんだもん。
私達の関係が崩れちゃうのが、もうこうやって一緒にいられなくなるのが。


「ほら、ふられたらさ。いつもみたいに慰めてやるから。お前の好きなアイス奢ってやるし。」


そう言って笑う平助はいつもの平助で。
この笑顔に私は何度も救われていて。


これからもこの笑顔を、独占したい。
だから神様、見ててね?


「き…。」

「ん?」

「好きなの。」

「??」

「平助のことが好きなの!」


しっかりと目を見て、平助の手をとって。
私の思いが少しでも多く伝わるように、平助の心へ届く様に。


「平助のことが…好き。」


平助は目を丸くして固まっていた。
と、思ったらすぐに顔が真っ赤になる。


「平助…?」

「お前…なぁ。」

「ごめん、いきなり言われても困ると思うけど…でも私…。」

「やっとかよ。」

「へ?」


はああああと大きなため息をついて平助がしゃがみこんだ。
頭まで抱えている。
私もつられて平助の前にしゃがみこんだ。
すると平助は相変わらず赤い顔をあげて口を開く。


「遅いっつーの!!俺はずっと…。」

「ずっと?」

「俺はずっとお前が好きだったよ。」

「え!?」


ずっと…?ずっとって…いつから?

「小さい頃から、お前以外好きになったことなんてない。」

「平助…。」


平助はいつもどんな気持ちで私の恋愛相談を聞いていてくれたんだろう。
いつもどんな気持ちで、私を送り出して、私を慰めていてくれたんだろう。


「ご…ごめん…。」

「泣くなよ、気にしてねえし。それに…これからは俺、お前の彼氏なんだろ?」

「うん!うん!」

「じゃあ神様に礼言って帰るとするか。今週末、どっか行く予定でもたてようぜ。」

「うん!!!」


そう言うと平助は私の手をとり立ちあがる。
私達は並んで神様にお礼を言って神社を後にした。
時々、神様に会いに来よう。いつまでも二人で仲良くいられますようにってお願いするんだ。


―恋のおまじない、大成功―



(あの神社すげえよな。)

(??)

(だって本当に叶っちまったぜ?)

(確かに…おまじないきいたよね。)

(また遊びに行こうな。神様に挨拶しにさ。)

(うん!(同じこと考えてる。))





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