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「名前!?な…泣いてんの!?ごめん!ほんと不安にさせたなら謝るから!」

私の異変に気付いた平助君が慌てて目元を拭ってくれる。
沖田君や源さんも驚いて目を丸くしていた。


「ち…違うの。謝りたいのはわ…私で…。」

「何でだよ?お前は何もしてないだろ?」

「わ…私、いつもデート遅刻しちゃうし…今日だって…。メールも返せないこと多いし、電話しながらねっ寝ちゃうこともある…。」

「そんなこと俺は気にしてないって。」

「でも!!これからもずっとこうだよ?もっと忙しくなって会える回数も減っちゃうかもしれない…その時愛想尽かされても仕方ないよ…私…。なのに自分は勘違いでヤキモチやくとか…嫌な奴で…。」

「名前!!」

私の言葉を止めるように、平助君が肩を掴んだ。
びっくりして涙がひっこんだ。

「俺は!そんなこと気にしたことない。」

「平助君…。」

「確かに忙しくて電話やメールの回数は減るかもしれないけどこうして会えた時は楽しいし、お前が誰かの為に働いてる姿好きだし…。尊敬もしてんだよ。」

「尊敬って…。」

「むしろ俺の方が愛想尽かされないか心配だっつーの…お前に収入抜かれるかもしんないし、いや、頑張るけど!なんとなく就職した俺と夢叶えたお前じゃ釣り合わないっていうかさ…。」

そんなこと一度も思ったことなかった。
平助君がそんな風に考えていてくれたなんて。

「ヤキモチは…嬉しいじゃん、普通に。むしろ俺なんていつもひやひやしてんだぞ?患者は男女関係ねえし周りに医者だっているんだろ?お前のほうがよっぽど狙われるっつーか…。」

「私の病院の先生おじいちゃんだし、患者さんもお年寄りが多いんだけど…。」

「だけど!若い奴がゼロじゃないだろ…。」

なんだ。
平助君もヤキモチやいてくれてたんだ…。
どうしよう、嬉しくてまた涙がでそうなんだけど…。

「嫌なやつなんて思わねえよ。それに、お前の嫌なとこ一つ見つかったって、お前の好きな所百個は言えるもん、俺。これからどんなお前見たって…俺やっぱりお前が良いんだ。」

「平助君…。」

「一緒にいられる時間が減りそうで不安ならもっと一緒にいよう。」

「もっとって…今以上に会える時間増やせないよ?」

「増やせる。」

「どうするの?」

「…結婚しよう。」

「…………え?」

「そうしたら、仕事以外はずっと一緒だ。俺だって名前ともっと一緒にいたい。これからも一緒に過ごしていたい。だから…結婚してください。」


結婚…。
結婚?!
え?まって、これって…プロポーズ!?!?

「平助君…それって…。」

「あ…。いや、あのその!!」


完全に勢いだったのか、私の反応を戸惑いと感じたらしい平助君は慌てて私の肩から手を離した。ガタッと椅子が大きな音をたてる。


「ご…ごめ…俺、いきなり…。」

「嬉しいよ…?すごく嬉しくて…涙が…。」

「だ…だって女の子にとってプロポーズってすげえ大事なんだろ!?俺、準備もしないで、いきなりこんなとこで…。」

顔を真っ赤にして目を泳がせている平助君に思わず泣き笑いになる。
すると今まで静かに見守ってくれていたんであろう沖田君が口を開いた。

「あーあ。こんなとこだってよ源さん。失礼じゃない?もう平助出禁にしていいと思うよ。」

「はははは。本当だねえ。」

「ち…違う!源さん違う!俺はここ大好きだけど!!!なんかプロポーズってこう普段行かないような店で…。」

源さんの方を見て必死に謝っている平助君に沖田君が追い打ちをかける。

「まあ確かにね。名前ちゃんも近所の定食屋さんでプロポーズされたなんて友達に言えないね。指輪もないし。」

「ごごごごごめん!ごめん!名前!今のなし!もう一回ちゃんとするから!」


今度は私の方を見て手を合わせて頭を下げる平助君。
もう沖田君、それ以上苛めないであげて。


「嫌だよ。平助君。」

「へ?」

「なしになんてしないで?私源さんのお店大好きだし、プロポーズものすごく嬉しかったんだから。だから…。」

――お嫁さんにしてください。

自分で言っておきながら恥ずかしくて顔に熱が集まるのがわかる。
だけど平助君も同じぐらい赤いからいいよね?


―こんな展開も悪くない―



(完全に二人の世界だよね…今日の僕のご飯奢ってよ平助。)

(なっ何でだよ!普通総司が奢るんじゃねえの?お祝いってことで。)

(次は二人で婚姻届もってきなよ。源さんに証人になってもらえば?)

((それ良い!!!))

(私でいいのかい?じゃあもう一人の欄は沖田君が書いてあげなさい。)

(…癪だからヤダ。)





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