少しずつあったかくなってきた今日この頃。 私はお昼御飯を早めに食べてお腹いっぱいだなあなんて幸せ気分で校舎内を歩いていた。
購買にお菓子でも買いに行こうと軽い気持ちだったんだ。
だけど私の名前を呼ぶ低い声。
「名前。」
「…。」
振り向くまでもなく、この声は私の大好きな彼の声。 ずっとずっと片思いをしている彼の。
「名前。止まれ。」
「…断る!!!」
結局振り向くこともないまま、 本日も始まる私と一の鬼ごっこ。
―怒られる君―
普通好きな人に名前を呼ばれたり、声をかけられたら嬉しくてドキドキするんじゃないか? そして笑顔で彼のもとへ行くんじゃないか。
もちろん私の心臓はドキドキしてますよ。
スーパーダッシュで酷使した心臓が口から飛びだしちゃうぞ〜と言わんばかりにバクバクしてます。はい。
そりゃあ階段かけのぼれば心臓も興奮するわ。 私は息を切らせているというのに追いかけてくる一は全く表情が変わらないんだよ、何で。
向かう先はいつも通り屋上で、私はドアを開けるとすぐに鍵をかけようとして…
「名前。」
そう。いつも通り、鍵をかける前に一に追いつかれるんだ。 ぐいっとドアを押しあけ、屋上へ足を踏み入れた一は後ろ手にドアを閉めると私の前に立ちふさがる。
「もう逃げ場はないが?」
「うう…。」
「名前。」
「はい…。」
「…スカートの丈が短い。その丈で階段をかけあがるな。それからピアス、ネックレスは校則違反だ。故に没収だ。今すぐはずせ。ああ、ブレスレッドもしているのか。それも…。」
「あああああああ!そんな全部持っていかないで―!!!」
「あんたが校則違反をするからだ。毎度毎度俺に見つかれば没収されるのがわかっていて何故つけてくるのだ?」
腕を組んで私を見てくる一はまさに「解せぬ」と言った感じで。 私はため息をついてアクセサリーを外して一に手渡した。
そりゃあわからないでしょうよ。 私が毎度毎度校則違反をする理由。
それは…。
「放課後、返してくれる?」
「ああ。ただこのような事を毎回やるわけにもいかないからな。次にやったら土方先生の所へ持っていくが。」
「ええ!?」
それはだめだよ! 意味ないよ! だって…。私。
一に怒られたくて。 一にかまってほしくて。 一と一緒にいたくて。
だからわざとこんなことしてるのに。
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