自分の信じる道を貫くあなた。
私よりずっと大人で、素敵なあなた。
いつかあなたの隣に並んで歩くことはできるのでしょうか?
―相応しい君―
「お祭り…ですか。」
私が差し出したお茶を受け取り、土方さんはふうとお茶を冷ますように息をかけるとゆっくりと飲む。
「ああ。小さな祭だが騒ぎを起こす連中がいないとは限らねえからな。俺達は交代で見張りだ。」
「そうですが…ご苦労様です。」
そう言って店の奥に戻ろうとした私の手首を土方さんが掴む。 突然のことに驚いて目を丸くしていると土方さんは困ったような、躊躇ったような表情で私を見ていた。
「えっと…土方さん?」
「あ、悪い。あの…だな。」
もう解放されているというのに掴まれた手首が熱い。私はそこをさするようにもう片方の手で掴むと土方さんの言葉を待った。
「祭、興味ないか?」
「え?お祭りですか?」
「男だけでいくと警戒されるだろ?」
「そんなに捕まえたい人がいるのですか?」
「っ…。」
騒ぎが起こったら捕まえるのであって、こちらから捕まえたいわけではないですよね?と聞くと土方さんはあーーと言いながら頭をくしゃりとさせる。
「一緒にいかねえか?」
「…。」
あまりにも驚いて声がでなかった。 だめか?と聞かれてなんとか私でよければと声を絞り出す。
それは昨日の出来事だった。
私が働いている茶屋に土方さんがよく来るようになったのは三ヶ月ほど前。 新選組の評判はあまり良いとは言えないけれど、時々お団子を食べにくる沖田さんや平助君は良い人だったから私の新選組に対する印象は悪くなかった。 それでも土方さんが初めて来たときは驚いた。
なんというか…甘い物があまり似合わなくて。 綺麗な顔立ちだけど、いや、綺麗な顔立ちだから眉間に皺をよせていると少し怖かったけど。
優しい表情をするとか。 笑うところとか。 私のことを気遣ってくれるところとか。
少しずつ彼のことを知っていって、私は彼に恋をした。
だけど彼は新選組の副長で。 そしてあの見た目だ、女の人がみんな振り返る。
私とは世界が違うんだって思った。 だから私は見ているだけで…時々こうしてお店で少しお話ができるだけで幸せだったのだ。
だけどいつの間にか、それが苦しくなってきた。 私はきっと我儘なのだろう。 好きなだけじゃ辛いなんて。
それでも何とか抑え込もうとしていたのに。
なのに。 彼からお祭りに行かないかと言われた。
土方さん。 少し期待をしていまいます。 あなたの隣に私はいてもいいんですか?
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