どうしてこうなっちゃったのかな。
呟いたつもりの言葉が雨音にかき消されていった。
―泣き虫な君―
公園のドーム型の遊具にこもってからどれぐらいの時間がたつんだろう。 時計も携帯も置いてきたし、何時か正確にはわからないけれどもう約束の時間になったかな。
ザーザーという音と、ポタッポタッという雫が滴る音。 その音のせいでまるで私の頬に流れているものは雨なんじゃないかと錯覚させられるほどだ。
本当だったら、今日は平助と二人でどこかへ出かける予定だったんだ。 なのにどうしてこんなところに一人ぼっちかって。 それは昨日、ケンカしてしまったから。 よりにもよって付き合って一年の記念日前日にケンカするなんて呆れちゃうよね。
ケンカの原因は平助が女の子と出かけていたから。もちろん友達と遊びに行くのを止めたりはしたくないし、平助のことは信じているから女の子と出かけてもそれはいいよ。 でもね、黙って出かけられて平気でいられる彼女なんてなかなかいないよ? どうしてこっそり出かけるの? 一言言ってくれればそれで良かったのに。
今日は何人かで遊んでくるってメールを信じた私は一人で買い物に出かけたんだけど、そこで平助が女の子と二人で歩いているのを見た。
それが昨日のことだった。
聞くのが怖かったけど勇気出して夕方電話したんだ。 そうしたら。 総司達とでかけてたって嘘つくから。 女の子と歩いているの見ちゃったって言ったら一瞬黙って、でもすぐに慌てて、違う!って。
平助とは幼なじみだからわかるの。 浮気とかできるような奴じゃないってこと。 だとしたらそれは。
もう本気なんじゃないかって。
そう思ったら本当に怖くなった。 平助の口から別れようって言われるのが耐えられなくて電話を切ってしまった。
すぐに電話がかかってきたけど無視していたらメールがきて。 ちゃんと話したいから電話にでてくれって書いてあったけど。 そんなこと書かれてたら余計にでられなくて。
携帯の電源を落としてその日は無理やりに眠った。 夕食も食べない私をお母さんは心配してたけどそれどころじゃなかったの。 苦しくて苦しくてもうどうしていいかわかんなかったから。
目が覚めても夢じゃなかったんだなって電源が落ちたままの携帯を見て思った。
今日の約束の時間はお昼の十二時。
だけど、会えるわけないよね。 昨日から私は無視し続けてるんだもん。 もうきっと愛想つかされてる。
服を着替えて何も食べずにフラフラと家を出た。 雨がふりそうだなって考えが一瞬頭をよぎったけど傘を取りに帰る気にもなれなくて。
当てもなく歩いていたらぽたぽたと顔や頭に水の感触。 すると一気に強くなったから、私は近くの公園の遊具にもぐりこんだんだ。
「そういえばいつもここに隠れてたな…。」
この公園は小さい時からよく平助と遊んでいたところだった。 平助とケンカするとよくここに隠れてたっけ。
そしてしばらくすると必ず平助が迎えに来るんだ。 どんなに私が悪くっても平助がいつも謝っちゃうんだよね。 そして手をつないで二人で家に帰ってた。
ねえ、平助。 寂しいよ。会いたいよ。迎えにきてよ。 やっぱり私平助じゃなくちゃ嫌だよ。 他の人のところになんて行ってほしくないよ。
「平…助…。っく…うっ…。」
何か私に足りないことがあったら頑張るから。 悪いところもなおすようにするから。 だから。
「平助…っつ!ううう…。」
会いたいよ。
next
|