「なんだー犬の話か。」
「流れでそうだとわかるだろ…普通。」
「普通じゃないからわかんないんだよ、平助君。」
「ちょっと!総司!」
沖田の足元に名前が蹴りをいれる。 痛いなあと呟きつつ沖田は斎藤をつついて言った。
「一君、彼女のしつけがなってないよ。」
「しっしつけ!?」
ボンっと音がしそうなほど斎藤が一気に顔を赤くし、その表情に沖田はニヤニヤと笑う。
「でも犬って可愛いよなあ。触らせてもらおうぜ!」
「僕猫派なんだけど。」
「いいじゃん!子猫もいるし。な?すみませーん!!!」
言うやいなや藤堂は店員を呼ぶとゲージの中にいた子犬を抱っこさせてもらう。 沖田も子猫を抱いて優しく背を撫でていた。
「はい、柴犬ですよ?」
「…ありがとうございます。」
ずっと見つめていた柴犬が腕の中におさまると斎藤は思わず微笑む。 大人しく自分の腕に抱かれている子犬にいつか飼いたいという思いが募った。
「名前、あんたも抱いてみるか?」
「…。」
「名前?」
「…いい。」
「は?」
ふるふると首を横に振り、瞬きをすることも忘れたかのように名前は犬を凝視していた。 その様子を斎藤は不審に思ったが動けないでいると沖田が名前の肩に子猫をのせた。
「わあ!びっくりした。」
「あれ?何だ。動物が苦手なのかと思った。」
「猫は平気…。」
「猫は?…まさか犬はだめなの?」
「え!?まじで!?」
肩にのっていた子猫を手の中におさめると名前はうつむいて頷いた。
「小さい犬は苦手…昔噛まれたことがあって。大型犬でも見てるのは良いけど触るのは…。」
「そ…そうだったのか。」
「でもさ、一君犬派だし。名前ちゃんも慣れたほうがいいんじゃない?」
沖田はほらと斎藤から子犬を奪うと名前に少しずつ近づける。
「ひっ!!」
「総司。苦手な者に無理やり近づけるな。」
斎藤は名前を庇うように間に入り込むと子犬を自分の腕の中におさめた。
「えーでも一君。将来は犬飼いたいって言ってたじゃない。」
「え?そうなの?」
「それは…。」
「だから、ほら、この子大人しいし。練習練習。」
沖田はそう言うと名前の手をとりそっと子犬に近づけた。 ちょんと触れると思わず手を引っ込めてしまう名前に藤堂が笑う。
「びびりすぎだって。びくびくしてたら子犬も驚くぜ?優しく撫でてやればいいんだよ。」
ほらと自ら抱き抱えている子犬を撫でてみせる。なるほどと名前はもう一度斎藤が抱き抱えている子犬に手を伸ばした。
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