偽恋ゲーム | ナノ

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金曜日の放課後からの時間が大好きだった。
だって土日が始まる。
千とどこかに遊びに行ったりもするけれど家にひきこもってネットしたりゲームしたりが最高なんだよね。夜更かし万歳。



だけどかれこれもう一週間はゲームをしていない。
斎藤にとられたまんまのゲームは返ってきてないし、家でもゲーム解禁令はでていない。



だから今日は金曜日だけど気分はあがらない。


そろそろ限界だ。
ゲームが返してもらえないのなら…
うちの親に彼氏ができたことを証明してもらわなくては!!!



 「さい…はっはじめ!」


危ない。
まだみんないるのに名字で呼びそうになった。
だけど名前で呼んだせいかみんなの視線が一気に集まる。


斎「…どうした?真尋。」


帰り支度をしていた斎藤の席まで近づくと首だけ動かして私の方を向いた。


 「あのさ、ちょっといい?」


斎「ああ。」



まだ何人か教室に残ってるし、私は斎藤を引っ張って後ろの方へと移動した。
ちなみに手には数学の教科書。ほら、まるで勉強を教えてもらってるみたいじゃない?



 「さっきの数学の問題、よくわからないんだけど…。」


とか一応言ってみる。
するとこっちを見ていた数人は勉強を教わっているのかと納得したらしくそれぞれの会話に戻ったようだ。

中には斎藤君に勉強教えてもらっていいなーなんて声もする。どこがいいんだ、こんな奴。



斎「…あんたはさっきの授業で何を聞いていたのだ?」


みんなに聞こえない小声で斎藤が私に聞く。
一気に刺のある感じになりましたね。



 「何を聞いていたというか…夢と妄想の世界に旅立っただけ…。」



斎「…。」



 「哀れんだ目で見んな!!」



斎「自業自得だな。…で、要件は何だ?」


 「え?」


教室の後ろにもたれかかるようにして立った斎藤は私の教科書をふわりと取り上げパラパラとめくった。



斎「あんたがわざわざ勉強を聞いてくるとは思えないからな。」


 「失礼だな。ゲーム返せ。」


斎「まあ、そろそろ返してもいいんだが…。」


 「ん?」


斎「もうすぐ期末だろう?あんたの為にもゲームはその後がいいのではないのか?」


 「余計なお世話ですよ…。じゃあうちに来てよ!」


斎「は?」


 「だってうちの母親ぜんっぜん信じてくれないんだもん!彼氏がそんなすぐにできるわけないでしょって。ひどくない?実の娘にこの仕打ち!!!」


斎「日ごろの行いが…。」


 「ああもうわかってます!まあ、うちに来るとか面倒か。そういうのしたくないから彼女のふりしてくれって言われてるんだしね。じゃあせめて一本電話いれてくれない?そうすればうちの親も…。」


斎「行く。」


私の言葉を遮るように斎藤の低い声が聞こえた。聞き間違いかと思わず黙って見つめていると斎藤が教科書を私に差し出しながら続けた。


斎「行くと言っているのだが。」


 「え?まじっすか。」


斎「そもそも俺が頼んでこんなことをしてもらっているのにあんたの頼みを一つも聞かないのはおかしいだろう。一度ぐらい家に行くことなど大したことではない。」



斎藤から教科書を受け取る。
と、斎藤が柔らかく笑った。



斎「明日でいいか?」


 「へ!?」


斎「テスト勉強だ。真尋は数学が苦手だからな、早めにやらないと範囲が終わらないぞ。俺でよければ手伝おう。」


どうしたどうした!?
何この斎藤!!!
思わずキョロキョロすると私のすぐ後ろにクラスメイトがきていた。



斎「では明日、真尋の家にお邪魔しよう。昼過ぎでいいだろうか?」


 「え…あ…うん。」


斎「また連絡する。」



そう言うと斎藤は自分の席に戻り荷物を持って沖田の所へ歩いて行った。
多分今日は部活があるんだろう。


あまりにも突然のことに私が立ちつくしているとクラスメイトの子が話しかけてきた。



 「いいなあ…真尋ちゃん。斎藤君とテスト勉強するんだ〜。斎藤君頭良いから何でも聞けていいね!」


 「あ…うん。」


 「私もあんなかっこいい彼氏ほしいなあ。」


そう言うと彼女はまた来週と言って教室を出て言った。


近くにあの子がいたからあの豹変っぷり!?
もうその演技ができるなら普通に誰かと付き合ってくれと思うのは私だけなの!?
恐るべし…斎藤。

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