偽恋ゲーム | ナノ

▽ 1



誰もいない教室。


オレンジの光が差し込んで。


彼の髪を明るくする。



 「好きだよ、真尋。」


 「私も!!!」


ふわっと少しクセのある髪。
くりっとした瞳。
何よりも可愛い笑顔。
私の愛しい愛しい人、新太君。



新「今からどこに行こうか?公園?映画?」


 「えーっとね…。」


私がどうしようかニヤニヤ…ニコニコしながら悩んでいると、バタバタという不似合いな音。




――バンッ!!!



けたたましい音をたててドアが開いた。


母「真尋!!!!!あんたいつになったらご飯食べに下りてくるの!?」


 「お母さん!?びっくりしたー!ノックぐらいしてよ!」



母「…まーたゲーム!?そんなものしてる暇があったら勉強しなさい!」


 「いっ…いいじゃん!私の趣味なんだから!ゲームは!!!」


母「ご飯も食べずにやるなら禁止!」


 「は?」


母「ゲームの中の男の子に恋なんかしてないで現実を見なさい!!!あんたしばらくゲーム禁止!!!!!」


 「ええ!?!?!?!?」



母「いい?うちでゲームしてるところを見たら没収だからね、没収。そうされるのが嫌だったら成績あげるか彼氏作るかどうにかしなさい。」



 「ええええええええ!?!?!?!?」








――――――――――――――――――――






 「ひどくない…?ねえ、ひどいよね。千。」


千「何がよ。」


机に突っ伏して前日の出来事を前の席の千に伝える。千とは高校に入学してからの友達で何でも話せる親友だ。



 「だーかーら。ゲーム禁止令がでたの。ゲーム禁止令。私恋愛系のやつだけやってるわけじゃないのにさ。新しいRPG買ったばかりで続きめちゃくちゃ気になってるのにさ…。」


千「まあ真尋のゲーム好きは知ってるけど…。ご飯も食べずにやってたらそりゃ怒られるわよ。」


 「うー。と、いうわけで!」


千「?」


カバンを机の上にのせ開いて千に見せる。


千「ちょっと!学校にゲーム持ってきちゃまずいでしょ!」



こっそりとカバンに忍ばせました。
持ち運べるゲームは便利ですよね。



 「大丈夫だよー。授業中にはやらないし。放課後こっそりやってから帰る♪」


千「こりない奴ね…。成績あげるか彼氏作るかしなさいよ、素直に。」


 「えー。無理だよ。どっちも。」


カバンを机の横に下げ、頬杖をついていちごみるくのパックを持つ。



千「何でよ。少なくとも前者は努力でどうにかなるじゃない。」


 「努力できるのも才能だと思いまーす。」


千「…。」


ああ、千が呆れてる。
怒られる前に話を変えないと。


 「後者はもっと無理だし。」


千「どうして?好きな人いないの?」


 「新太君。」


千「ゲームじゃなくて!」


 「んー…。」


三次元の世界に?
好きな人?


ゲームやマンガ好きってのもあって男友達は多いけど、そういうふうに見たことないし。
男女問わず友達がいて楽しく過ごせればいいじゃん。
私がキュンキュンするのはゲームとマンガの世界だけで良いと思う。


千「じゃあ…あーいうのは?」


そう言って千が指さした先には沖田がいた。
女子に囲まれて楽しそうに笑ってる。



 「あいつ好き嫌い激しいし、Sっ気強いから嫌。」


千「え?そうなの?」


沖田はもてる。
顔も良いし運動もできるし。
音楽の趣味が似てるからけっこう話すんだけどやっぱりそういうふうに見たことはないな。
だってあいつけっこう悪いよ。
土方先生に年中イタズラするし、隣に歩いている女の子がころころ変わるし。


 「友達としてはいいけどね。」



沖「何が?」



 「うわっ!いつの間に来た!?」



さっきまで教室の前の方にいた沖田がいつの間にか私たちの近くにいた。



沖「何かこっち見てなかった?」


 「自意識過剰。」


沖「ひどいよね、真尋ちゃん。」



千「ごめんね?実は…。」


千が説明をする。
ちょっと…私が親に怒られた件から言わなくてもいいから…。


千「じゃーあっちは?」


次に指さした先には南雲。
自分の席で何か本を読んでいる。



 「嫌だよ。スーパーシスコンって噂じゃん。あいつこそ腹黒っていうか…腹の中じゃないね、もう黒いの全面にでてるもんね。毒舌すぎてこっちのHPがゼロになるよ。」


沖「くくっ…表現方法がほんとゲーマーだよね、真尋ちゃん。女の子がHPとか言わないよあんまり。」


千「えー。もうどれならいいのよ。」


何気にイケメンばかり選んでるよね、千。
私別に顔はどうでもいいんだけど…あ、いやそりゃかっこいいほうがいいけれども。


千「じゃあ…あ!あれ!」


どうして忘れてたのかしら?と顔に書いてあるよ千。
彼女の人差し指が向いている方には。


 「斎藤?」


沖「一君?」


ノートを広げてスラスラと文字を書いている斎藤がいた。
休み時間だというのにえらいな、予習?


千「風紀委員で真面目だし、頭も良いし、運動も沖田君並みにできるし、顔もいいけど?」


 「いや…あまり話したことないし。」


そんな話をしていると斎藤の前に隣のクラスの女の子が来た。
何か一言二言話しているが斎藤は目も合わせていないようだ。

すると女の子は悲しそうな顔をして教室を出ていった。


千「あら。ふられちゃったのかしら?」


沖「まあ一君は難しいだろうね。」


 「斎藤が女の子と話してるのほとんど見たことないよ。もてるのにね。」


千「クールなところも惹かれるんじゃない?で、どう?」


 「いや、どうも何も。無理でしょ。無理無理。向こうがまず私なんか興味を示さないよ。世界が違いすぎる。」


何一つ交わらなそうだ。
頭のレベルも。
運動のレベルも。
見た目のレベルも。
趣味嗜好も。


沖「世界が違う…か。」


 「?」


千「やっぱり成績上げるしかないわ。頑張れ。」


 「無理だってえ…。」


沖「がんばりなよ。」


 「仕方ない。」


千「?」


 「しばらくは学校でゲームして帰るわ!」


千・沖「「勉強しろ。」」


千と沖田の見事に重なったツッコミと同時に授業開始のチャイムが鳴り響き、それぞれ席に着いた。

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