偽恋ゲーム | ナノ

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あの嫌がらせがあって実はあまりよく眠れてなかった。
意外と繊細なところもあるんじゃない、真尋ってば可愛い!とか自分でふざけて思い返してみる。


まぁ、そういうわけなんで授業中に眠っても仕方ないじゃないですか。



永倉先生の授業はやっぱりというかなんというか完全に寝ていた。
ぴくりとも動かなかったから生きているのか心配してたらしいよ、永倉先生ごめんなさい。


さすがに一時間眠ったらすっきりするんだなーなんて思いながら窓の外を見る。


授業をまともに聞いたらまた寝ちゃいそうだからこうして違うことをしてるんですよ。
よくある話でしょう?


帰ったら何しようかな。
そうだ、もうすぐ新太君攻略終わりそうなんだよね…。次はどのキャラにしようか。
正直他のキャラも魅力的だけどダントツで新太君がいいから終わってしまうのが少しさみしいような…。


確か今恋人になってから最初のデートで…そうそう遊園地行ったんだ。だからそろそろあれですよあれ。


ほら、キス!乙女ゲームで心臓ごっそり持っていかれるスチルが登場のはずですよー!!
ああ、どうしよう。心臓が持つかな?大丈夫か?私!!!


ほんと液晶割れれば良いのにぃぃぃ!


目を閉じればすぐに思い出せるの。
新太君の笑顔、声。
照れた顔もたまんなくって。


――真尋。



!?



脳内で再生されたのは斎藤の声、顔。
あの時の記憶。


キスされた記憶。



 「っ…!待った待ったー!!!!」



ばっと起き上がると見慣れた景色。
あれ?起き上がるとって…私、寝てた?


そして…これは…またやっちまったのか?
驚いた顔でこっちを見ているクラスメイト。
数人はもうすでに笑いだしていた。


やばいよ…やばいよ。
だって今は永倉先生の授業じゃない。



土「…廣瀬、何をどう待ってやればいいんだ?」



ぎゃあああああああ!
鬼がいる!!!!!!


今にもチョークを粉々にしそうなぐらいプルプルと手を震わせ、土方先生が私を見ていた。


 「せ…先生。眉間に皺が…かっこいいのにもったいないです…よ?」


私の言葉に沖田がもう無理死ぬとか言って笑いだした。やめろー!あんたが笑うと余計に…


土「てめぇのせいだろうがああああ!」


 「すすすすすみませええええええん!!!」


その後、廣瀬真尋の行方を知るものは誰もいなかった…。


ではなく、放課後職員室に呼び出しされましたとさ。






沖「ほら、真尋ちゃん。はやく土方先生の所に行ってきなよ。」


 「ニヤニヤしやがって。くそ…。」


斎「あんたが悪いだろう。どう考えても。」


 「っ…。」


放課後、荷物をまとめてから職員室へ向かおうとしていた私のところに沖田が歩いてきた。
急いでいたせいもあってその後ろにいた斎藤に気付かず…不意打ちだ、思いだして少し顔が赤くなる。


 「誰のせいだと…。」


斎「?」


 「なんでもないっ!」


昨日の今日で何で私だけがこんなに焦ってるわけ?ってかなんで斎藤は普通なの!
あの後、ずっと笑っていた斎藤を怒っていたせいでなんかうやむやになったけど。
あれってどういう意味?なんて今更聞けないじゃないか。

私が土方先生に怒られたのはお前のせいだ。
いつか必ず仕返ししてやる…。

私がけしからん闘志をひそかに燃やしていると沖田がいきなり顔を近づけた。


 「わっ!何!?」


沖「いや、良かったね。解決して。」


 「え?あ…うん。ありがとう。」


沖田も心配してくれてたんだね。
嫌がらせが終わったことは斎藤が話したんだろう。


沖「…真尋ちゃん。顔色よくないけど寝てないの?」


 「あ…最近ね。でもおかげさまでぐっすり眠れるよ。」


今度は違うことで悩まされそうですけどね。
すぐ近くにいるエセ風紀委員黒藤に。


斎「…大丈夫か?」


大丈夫じゃないです。少なくともあなたのせいで。


 「うん。とりあえず土方先生の所に行ってくる…。」


沖「あ、今日どっか寄って行こうよ。僕ら待ってるからさ。」


 「は…はーい。」


何か避けるわけにもいかないし、どうしていいかわからないんですけど!?
まぁ今はとりあえず鬼と戦いに行きますかね。

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