▽ 1
沖「と、いうわけで。行こうか。」
「は?」
千「え?」
沖「ほら、行くよ。みんな。」
放課後、荷物をまとめた私と千を引っ張るように沖田が教室の外へ連れ出そうとする。
何がなんだかわからない私達に斎藤が横で説明をした。
斎「総司が、どこかに俺達を連れていきたいそうだ。」
「それ、全然説明になってないよ!?」
千「どこ行くの?」
斎「俺も聞かされていない。」
沖「楽しいところだよ。楽しいところ。特に真尋ちゃんは喜ぶんじゃない?」
「え?」
やっと腕を離してくれた沖田がニコニコしながら私を見た。
何だかよくわからないけれどついていけばいいんだよね?
特に用事もないし、千も予定がないと言ったので私達は沖田と斎藤と寄り道をすることにした。
「わー!!!」
沖「ほーら、喜んだ。」
「行きたかったんだよね!今月オープンでしょ!?」
沖田についていった先は有名な大型アミューズメント施設。ゲームセンターやカラオケ、ボーリングが一か所でできるということで人気なんだけど最近近くにそれが立ったんだよね。
千「すごい混んでるけど…何するの?」
沖「ボーリングがいいなと思ったけど、今日は無理かな〜。」
斎「オープンしたばかりでは仕方ないだろう。」
「あれ?斎藤?何帰ろうとしてるの?」
入ったばかりだというのに斎藤はもう出口の方へ行こうとしていた。
斎「これではボーリングは無理だろう?帰るしかない…。」
「何言ってるの!?カラオケもゲーセンもあるじゃん!」
斎藤の言葉にかぶせるように訴える。
こんなに楽しいものがいっぱいあるところなのに何もしないとか考えられない!
斎「俺はカラオケというものは好きになれな…。」
「じゃあゲームしよゲーム!いっぱいあるから。はいはい、行くよー。」
斎「ちょ…離せ、廣瀬!」
ぐいぐいと斎藤をゲームコーナーへ引っ張って行く。沖田と千も楽しそうについてきてくれた。
沖「あ、プリクラでもとる?」
斎「何故そんなものを…。」
千「いいわね〜。とりましょ、真尋!」
「プリクラ?いいけど…。」
引っ張られるようにしてプリクラコーナーへ連れていかれると千と沖田に中に入れられた。
斎藤もしぶしぶ入ってくると沖田がお金を入れて千が画面を押している。
千「とるわよ。」
「はーい。」
前に私と千、後ろに沖田と斎藤が立って撮影がスタートした。
一枚、二枚と撮影が進み、最後の撮影だと機械が知らせてくれる。
沖「ねえ、千ちゃん。」
「?」
沖田が後ろから千の肩を叩き、何か話していた。
すると千は笑顔で斎藤に話しかける。
千「斎藤君、次、私後ろでもいいかしら?」
斎「?ああ…かまわないが。」
千と斎藤が入れ換わり、私の横に斎藤が立った。
「千、後ろで写る?」
千「大丈夫大丈夫。沖田君とポーズとるから。」
「へえ…。」
いつの間にそんなに仲良くなったの??
不思議に思ったけど機械のカウントダウンに思わず前を向いた。
カメラに笑顔を作る。
最後の二秒で後ろの二人が動いた気がした。
――カシャッ
「え?」
画面には笑ってる私と真顔の斎藤だけ。
千と沖田は画面に写っていなかった。
「え?何で二人いないの?」
斎「…直前で座ったんだろう?」
沖「うん。僕がツーショットにしようって千ちゃんにお願いしたんだよ。」
「え!?何で!?」
千「だってあなた達、一緒に登下校もしないし、休み時間もほとんど話してないし。こういう一枚がないと信用されなさそうで。」
沖「待ち受けにでもしておけば?」
「こっ断る!」
斎「俺もだ。」
ラクガキをした後、出てきたプリクラを千が四等分した。
さらにケータイにデータを送る。
沖「一君、ダウンロードしてあげるからケータイ貸して。」
斎「俺はいい。」
沖「いいからいいから。」
斎「あ!返せ!」
斎藤のケータイを無理やり奪うと沖田は素早くデータをダウンロードした。
そしてさらにケータイをいじる。
斎「総司!!!」
沖「はい、出来上がりー。」
見事に斎藤のケータイの待ち受けは私とのツーショットに変えられていた。
斎「どこで変えるんだ!?」
沖「ぷっ…一君、待ち受けの変え方知らないの!?」
斎「普段使わない機能はよくわからん。」
沖「変える必要ないじゃない。彼女とのプリクラ待ち受けにしても誰も何も思わないよ。」
斎「俺が困るんだ!」
あーあ。
もう完全にからかわれてるよ。
ああなった沖田は簡単に直してくれないと思う。頑張れ、斎藤。
手にしたプリクラをまじまじと見つめた。
私は笑ってるけど斎藤は真顔。
これ見てカップルって思う人いるんかな?
「ま、いいや。とりあえず他も行こうよ。千。」
千「あの二人放っておくの?」
「うん。そのうちくるでしょ。」
そう言って私は千とUFOキャッチャーのコーナーに移動した。
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