偽恋ゲーム | ナノ

▽ 3.



学校からの帰り道、といっても駅までだけど私は斎藤君と一緒に行くことになった。
沖田君や藤堂君が一緒に帰ろうと言ってくれたんだけど斎藤君がさらりと断っていた。

…まあばれちゃうよね。


「あんたの家は遠いのか?」

「ここから二駅。遠くないよ。斎藤君は?」

「俺は一駅だ。」

「近いねー。」


そんなたわいもない会話から少しずつお互いのことを知る。
一駅ととても近いというのに彼はクラスで一番早く学校へ来ていることとか、部活のない日も沖田君や藤堂君に捉まって三人でよくより道をするとか。
どうやら彼らは小学校からの幼なじみらしく家も近いそうだ。


「楽しそうだね。」

「あいつらのペースでいると金と体力がいくらあっても足りぬ。」

「あはは、でも楽しそうな顔してるけど。」

「…どこがだ。」


相変わらず無表情で口が悪いけど、多分本気で嫌がってたら付き合わないよね。
仲が良いんだなと少し羨ましくなる。


「あ。猫。」


もう少しで駅というところで黒猫に出会った。
首輪をしていないから野良猫かもしれない。


「おいでーおいでー。」

「…やめておけ、引っ掻かれたら破傷風になるぞ。」

「大丈夫だよ。猫〜猫〜。」


私がちょいちょいと手をふると人懐っこいのか猫が近付いてきた。
もしかしたら飼われてたのかな?

「ほら、おとなしい。」

「あんたは猫が好きなのか?」

「うん。可愛いじゃん。ほら、斎藤君も触る?」

「俺はいい。」

「もしかして苦手?」


斎藤君にも苦手なものがあるのかと驚いて顔を上げるとそこには


「…ねえ、触りたいんだよね。」

「別に。」


完全に猫が好きそうな顔をしている斎藤君が立っていた。


別にとか言っちゃってるけどすっごい見てるじゃない。見つめちゃってるじゃない。


「はい、猫が斎藤君に抱っこしてほしいって。」

「…。」


無理やり猫を押し付けると斎藤君は腕に抱え優しく撫でている。
ほら、やっぱり。猫好きじゃん。


「何で猫好きなのに触らないの?」

「…似合わないだろう。」

「は?」

「総司に俺が動物を撫でていると変だと言われたことがある。」


変…。
変って。


「あははは。確かに。」

「笑うな。あんたが無理やり…。」

「いつもより優しそうな顔になるからだよ、きっと。」

「や…優しそう?!」

「いいじゃない。犬や猫を触ってたらみんなそうなるよ。普通のことでしょう?」

「…そうか?」

「うん。何もおかしくないでしょ。」


斎藤君がゆっくりと猫を地面に降ろすと撫でられて満足したのか猫は私達のところからすぐに去って行った。
私達もどちらからともなく歩き出す。


「あんたは猫派か。」

「そうだね。犬も好きだけど。斎藤君は…猫派だね。」

「決め付けるな。犬も好きだ。」

「そうそう。そうやって好きってちゃんと言えばいいんだよ。」

「…変な奴だな、あんたは。」


そのまま駅へついて私達は別れた。
いつもだったら黙々と歩くだけの帰り道なのに今日は何だか違って見えた。


何だろう、少しだけど斎藤君がわかって嬉しかったんだと思う。
こんな風に男の子と会話するのも考えてみれば久しぶりだった。


斎藤君と付き合ったら、こうしてたわいもない会話で笑えたり、穏やかな気持ちでいられるのかな。


…って、何考えてるんだろう。私。

prev / next

[ ←目次 ]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -