偽恋ゲーム | ナノ

▽ 2



 「な…何故…!」


斎「…それは俺の真似をしているつもりか。」


 「ちがっ!いや、その!え!?ふ…。」


斎「ふ?」


 「不法侵入!!!!!」


斎「…寝言は寝てから言ってくれ。俺は何度もノックをしたのだが。」


聞こえてなかったら意味がありませーん。
乙女の部屋に入ってくるとか信じられませーん。


という私の叫びは華麗にスルーされた。


斎藤はゆっくりと部屋に入ると置いてあるクッションの上に座る。
思わず私も起き上がってベッドの上で正座した。


そして訪れるのは…沈黙。
やだやだ何この状況。


何で何も話さないの?
自分から部屋に入ってきておいて無言ってなんだ!


 「あの…。」

耐え切れずに思わず口を開いてしまう。
すると斎藤はちらりとこちらを見た。


斎「…何だ。」


 「何だじゃない!何しにきたの?用があるから来たんじゃないの?」


斎藤の返答につい言葉があふれ出る。
だってこれ私が言ってること正しいよね?
いくらバカでも間違ってないよね?


斎藤は立ち上がると私の目の前に正座した。
突然の行動に思わず一緒に立ち上がりそうになったのをなんとかこらえて座ったまま待機。


斎「あんたは何故いつもそうなのだ。」


 「…はい?」


斎「一方的に話をして、人の話も聞かずに立ち去る。いつも一人で抱え込んですべてを終わらせる。何故いつもそうなのだ。」


 「へ?」


何故って…。
聞かないでよ。
そんなの、怖かったからに決まってるじゃん。
斎藤からはっきりと返事をされたくなかったからだよ。


 「だって…。」


うまく言えず、目だけが泳ぐ。
そんな私を見て斎藤が続けた。


斎「あんたの気持ちは…嬉しかった。」


 「え?あ、そう…。」


――嬉しかった
その言葉にほっとしてしまう。
嫌われたわけではなさそうだし。
斎藤でもそんなこと言うんだって少し驚いてしまった。


斎「今まで言われてきたものとは全く違った。あんたは…いろんな俺を知って言ってくれたんだな。」


改めて言われてしまうと顔に熱が集まる。
だって告白した本人にそんなこと言われるってある!?何この拷問。


斎「あんたと関わるようになってから、俺は変わったと思う。」


 「斎藤が?」


斎「あんたにはいろいろ教えてもらった。」


 「ええ!?私何一つ斎藤に教えられることなんてないんだけど!!」


斎「わかっていないならそれでいい。だが俺は…。」


斎藤が一瞬言葉を詰まらせた。


 「斎藤?」


斎「あんたを選んでよかった。」


 「っ!?」


ふわり。
そんな表現が似合う表情だった。
柔らかく微笑んだ斎藤は、おそらく他の誰も見たことがないんじゃないかっていう表情で。
心臓がどくんと跳ねた。



斎「あんたでよかった。他の誰でもなく。」


 「斎藤…。」


斎「あんたみたいな奴は他にはいないだろう?」


そう言って笑う顔はいつもと同じ少し意地悪そうだったけど、でもやっぱりどこか優しくて。
思わず目頭が熱くなる。


 「ねぇ斎藤…。」


斎「なんだ?」


 「斎藤は…。」


それだけなの?
偽恋ゲームをした相手が私でよかった。
それだけを言いに来たの?

違うよね?



 「斎藤は…私のこと、好き?」


本当は知りたかったこと。
怖いけど、聞きたかったこと。

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