▽ 1
「はぁ…。」
ごろりとベッドの上で寝返りをうつ。
なんとなくゲームをしているもののちっとも頭に入ってこない。
斎藤に自分の気持ちを伝えた後、沖田や平助にメールは入れたけど、そのまま合流することもなく私は真っ直ぐ家に帰った。
部屋に直行してすぐにゲームの電源を入れた。
制服を着替えもしないでベッドに転がるなんてお母さんに絶対怒られるんだけど何だか何をするのも面倒だ。
斎藤はどう思ったのかな。
驚いた?
困った?
それともなんとも思ってない?
勉強と部活のために恋愛するつもりがないから付き合うって契約だったんだ。
好きになっちゃいけなかったのに。
気持ちは止められないものだと学んだよ。
「明日から気まずいんかな。いや、そもそも最近会話もないし関係ないか。」
独り言が部屋に響く。
すると優しい声が降ってきた。
新『好きだよ。真尋。』
画面の向こうから微笑んでくれる新太君。
本当に君は天使か。
そうだよね、そもそも私こういう人が好きなんだよ。
ふわって笑顔が可愛くて、優しくて、一緒にはしゃげるような人。
「全然違うよね。ほんと。」
無愛想で、冷たくて、私のテンションを冷めた目で抑えるようなやつ。
何だこれ、正反対じゃないか。どうなってる。
母「真尋ー!!!」
いきなり下の階からお母さんの大声が聞こえる。
まだ晩御飯には早いでしょ?
全然おなかすいてないんだけど。
「まだお腹すかないよー!!」
負けないぐらいの大声で返事をすると私は再びゲームを動かした。
「やっぱり私には新太君しかいないんだなー!」
がっつりゲームしよう。そうだ、ゲームの中でラブラブ素敵な学園生活過ごしてやる。
ふははは、見てろよ。黒藤め。
数年後に恋愛しておけばよかったー!とか後悔するが良い。
「くそ…あいつが後悔する姿が想像つかないだと…。」
私はゲームを止めた。
ぽいっと放り投げて近くにあった抱き枕を抱きしめる。
なんなの。
もうふっきろうって思ったんじゃないの?
何してたって結局。
あいつのことを思い出す。
あいつのことを考える。
「斎藤…。」
悔しいな。
なんで私だけこんなに。
「斎藤…。」
好きになっちゃったんだろ。
「斎藤。」
斎「何だ。」
ああ。
もう幻聴まで聞こえてきた。
本当に嫌だ。
斎「廣瀬。」
「…え?」
ごろんと体を反転させてドアを見る。
そこには相変わらずの無表情な斎藤が立っていた。
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