偽恋ゲーム | ナノ

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千「ねえ、真尋。あんたちゃんと伝えなさいよ。」


 「はい?」


お昼御飯を食べ終わり授業が始まるまでのんびりゲームでもしようかと思っていた時。
いきなり千が私のおでこをつんとつついた。


沖「そうだね。もうさ、イライラするからはっきりしてきてくれる?」


 「あの…。」


平「そんな言い方するなって。総司。」


沖「一君も一君だよね。素直じゃないというかなんというか。」


――素直じゃない。

それじゃまるで斎藤が私のこと…いやいやいやいやありえないって。
だってもしそうだったらあのままいられたじゃない。


沖「ちなみに一君はね、真尋ちゃんが平助君を好きだって勘違いしてるよ。」


平「ぶはっ!!!」


 「えええ!?」


沖田の発言に私は大声を、平助は飲んでいたカフェオレを盛大に吐き出した。


 「な…何で?」


沖「知らないよ。でも真尋ちゃんがそう言ってたって…。」


平「…あ。」


千「覚えがあるの?」


平「もしかしてさ、真尋がこの前倒れた時に俺に言ってたやつじゃねえの?」


倒れた時?
…ああ。そういえば平助を励ますためにそんなこと言ったような言ってないような…。


平「お前が倒れる直前、一君が来たんだよ。で、俺が一君に気付いた瞬間に真尋倒れたから…。」


だから私は斎藤がいたことに気付かなかったの?
保健室に斎藤がいたのは運んでくれたから?


千「じゃあ斎藤君は勘違いして偽恋を終わらせようなんて言ったの?だとしたら簡単じゃない。」


 「え?」


千「真尋が伝えればいいのよ。好きなのは藤堂君じゃなくて斎藤君だって。偽物じゃなくて本物の恋人になろうって。」


 「こっ…恋人!?」


千「何照れてんのよ、今まで恋人だったじゃない。一応。」


平「ずっとこのままより伝えたほうがいいかもな。すっきりしないだろ?」


伝えるって…。
私が?斎藤に?


好きです、付き合ってくださいとか言えと?
何それ、何の罰ゲーム?


 「伝えるも何も…もう忘れるって決めたの。」


千「真尋、それでいいの?」


 「だって…多分避けられてるもん。話しかけるすきもないぐらい。」


平「それは…一君もどうしていいかわかんないんだろ?自分から関係を断ったわけだし。」


 「それって私との関係は終わりにしたいってことでしょ?」


そういうことだよ。
だったら斎藤の望み通り、卒業するまで学業と部活に専念させてあげればいい。


沖「学業と部活…ねぇ。」


 「沖田?」


沖「最近調子悪いよ。一君。」


千「そうなの?」


平「あー…確かに。ちょっと調子悪いかもな。」


調子悪いってどういうこと?
この前の試合はものすごく調子良かったじゃん。
何で??


沖「真尋ちゃん。君の為にも一君の為にもはっきりした方がいいと思うんだよね。」


 「だ…だから、避けられてるってば。」


沖「大丈夫。今日の放課後さ、中庭にいてよ。ゲームして待ってて。」


 「は?何で?」


沖「絶対そこに一くんが行くから。」


 「こ…来ないよ。」


沖「僕にまかせてって。」


任せたくないです。怖いです沖田さん。


平「俺も手伝う!だからさ、ちゃんと一君に伝えろよ。絶対うまくいくって!」


千「そうよ!がんばりなさい!真尋!」


三人に囲まれるように応援されて思わず目が泳ぐ。頑張るも何も戦ったところで何もないってば。


沖「あれ、真尋ちゃんともあろう子がまさか戦いに行かないの?」


 「え?」


沖「何のゲームでも挑戦して攻略してきたっていうのに、まさかこれぐらいのことができないってことはないよね?」


 「げ…ゲームと現実はちが…。」


沖「そうだよ。現実は違う。だけどね、それが戦わない理由にはならないでしょ?真尋ちゃんは一君の為に伝えないって思ってるかもしれないけど、逃げてるだけだから。それ。」


ぐさりと沖田の言葉が刺さる。

そうだ。
私は斎藤が関係を終わりにしたいと言ったから、斎藤が学業と部活に専念したいと言っていたから、迷惑かけたくないから…そんなことばかり言って諦めようとしてたけど。




逃げてるだけだ。
伝えてもいないくせに。


そんなんでいいの?
いいのか?廣瀬真尋!!


 「わかった…。伝える。」


千「真尋。当たって砕けてきなさい!」


沖「砕けちゃだめなんだけどね。」


平「よーし!放課後!決まりだな!」


こうして私達の告白作戦はスタートしたのだった。

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