▽ 3
千「ねえ、真尋。お昼購買に買いに行きたいんだけど…。」
「あ、私も今日持ってきてないから。いこいこ。」
お昼休みのチャイムがなって私と千は購買へ向かった。
千には斎藤とのことをちゃんと話した。
偽恋が終わったこと。
斎藤のことが好きだったこと。
もう忘れようとしていること。
忘れる必要があるのかって言われたけど仕方ないよ。だって、あれから斎藤が話しかけてくることはないんだから。
それはつまり終わりってことでしょう?
千「人が多いし、まとめて買っちゃいましょう。私行ってくるわ。」
「え?いいの?」
千「うん。ここで待ってて。」
千はそう言うと私を購買の入り口の所へ待たせて中へ入って行った。
確かにすごい人だから一人の方がいいのかも。
ぼーっと中を覗いているといきなり後ろから手が伸びてきた。
「うわああ!」
沖「ねえ、もっと可愛い悲鳴はあげられないの?」
「何!?沖田!」
私の首に後ろから手を巻きつけるようにして沖田が覆いかぶさる。
おい、ここをどこだと思っている。
沖田ファンクラブに今度は殺されるじゃないか。どうしてくれんだ、沖田。
沖「ぼーっとしてるからさ。」
「ぼーっとしてる人に抱きついていいって法律があったんでした?日本は。」
沖「あるんじゃない?」
「あるかー!!!とりあえず離せ!」
沖「いーやーだー。」
「何で!?」
意味がわかんないんだけど。
何の嫌がらせ?
早く千帰ってきてよー!!!
突然ぱっと背中の圧迫感が消えた。
振り向くと沖田が驚いたような顔をしていて、その後ろに斎藤がいた。
斎「やめろ、総司。」
沖「あれ、一君。どうしたの?」
斎「どうしたのではない。あんたを探していたのだ。」
沖「ふーん。真尋ちゃんと楽しく話してたんだよ。」
斎「…廣瀬は楽しそうには見えなかったが。」
こんなに近くで斎藤を見るのは久しぶりかもしれない。
気がつけば目で追っている自分がいたけれど横顔や後姿だけだった。
名字を呼ばれるもの久しぶりだ。
沖「あーあ、一君に邪魔されちゃったなぁ。」
斎「邪魔?」
沖「そんなに眉間に皺寄せてさ。気にいらないなら言えば良いんじゃない?」
「え?沖田?」
斎「…あまりこいつをからかうな。」
「斎藤?」
沖「一君。僕だから怒ってるの?抱きついたのが平助君だったとしても気にいらないんじゃないの?」
「え?あのー…もしもし?」
私の声なんて全く届いていないのか。
いや、届くだろ。目の前だぞ。
二人で何の話をしているのか説明してくださいよ。
千「お待たせー。あれ?沖田君、斎藤君。一緒に食べるの?」
「えーと…。」
ちょうど千が戻ってきて場の空気が変わる。
すると斎藤が踵を返して歩き出してしまった。
沖「一君?」
斎「俺は職員室へ行かなくてはならない。それを言いに来ただけだ。昼は平助と食べてくれ。」
振り向くこともしないでそう告げると斎藤は職員室へと続く廊下を歩いて行った。
微妙な空気を帰るように沖田が笑って私達に話しかける。
沖「ねえ、僕もお昼一緒に食べていい?平助君も。」
千「え?ええ。いいわよ。」
「うん。」
私達は久しぶりに空き教室へと移動してお昼を食べることにした。
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