▽ 2
「私はどこへ連れて行かれるのか。」
沖「あそこだよ、あそこ。」
ぐいぐいと引っ張られて連れていかれた先は前に斎藤や沖田、千と行ったアミューズメント施設。
平「ゲームでもカラオケでもボーリングでも何でもいいぜ!何がいい?」
楽しそうに笑う平助と微笑む沖田。
平助はともかく沖田、怖いよ。何を考えている…。
それから二人とも離してくれないかな。
両手に花気分でありがたいことだけどさ。
さっきから周りの女子の視線がすごいんだよ。
沖「どうせ部屋にひきこもってたんでしょ。だったら外で思い切り遊んだ方がいいって。」
平「そうそう。気分転換しようぜ?」
そっか。
二人とも励ましてくれてるんだ…。
ん?ちょっと待って。
それって二人とも、私が斎藤のこと好きだって…。
うわあああああああ!!!
やだ、恥ずかしい。死にたい。
でもよく考えれば平助の前では泣いてるし、しばらく落ち込んじゃったし誰がどう見てもバレて…ああやだもうやだ。
一人パニックになっている私を引きずって二人はボーリングのコーナーへ歩いて行った。
そして一時間後。
沖「ねえ、真尋ちゃん。早くストライクだしてくれない?勝負にならないんだけど。」
「うっさい!手加減しろよ!」
平「まあ、女の子ってこんなもんなんじゃねえの?」
沖「女の子はね。」
「よっしゃ沖田、表へ出ろ。」
三人でボーリングを始めると意外と盛り上がった。
なんとなくわかっていたけれど二人とも上手い。ストライクばんばん出すし、他のレーンの女子の視線をがっつり集めていた。
私も下手なほうじゃないけど全然二人には勝てる気がしない。
悔しいから後で千と練習しに来よう。
「あー右手が痛い。」
しばらく投げ続け、私はペットボトルの水を一口飲んだ。
右腕がじんじんする。明日は筋肉痛だな。
沖「まあ連続で三ゲームもすればね。」
平「じゃ、ボーリングはやめてカラオケでも行くか??」
「いいね!」
そのままボーリングからカラオケへと移動し私達は遊んだ。
私と平助で叫ぶように歌いまくって、沖田が笑ってそれを見ていた。
久しぶりに体を思い切り動かして、叫んで。
思い切り笑えた気がする。
二時間後。
そろそろ帰ろうかという話になって私達は外へ出ようとした。
入口に向かう途中にあるゲーム―コーナーにどうしても目がいってしまう。
あの時は四人でプリクラとったなとか。
UFOキャッチャー上手だったなとか。
意外と負けず嫌いな性格だったなとか。
思い出したくないのに。
「わっ!?」
突然視界が真っ暗になった。
と、同時に目の上に温もり。
沖「ほら、帰るよ。」
平「おー、帰るぞ帰るぞ。」
ぐいっと体を反転させられ、出口へと押し出される。
目をふさいでいたのは沖田で、押し出したのは平助だ。
「…うん。」
それだけ呟くと、三人で並んで帰った。
暗くなってきたからとか沖田がガラにもないこと言いだして。
二人は私をちゃんと送り届けてくれた。
「ありがとうね、二人とも。」
家の前でお礼を言うと二人は目を丸くした。
沖「…やめてよ、明日雨になるじゃない。」
「おい。」
平「ただ遊んだだけだろ?また行こうぜ。」
「うん!」
沖「真尋ちゃん。」
沖田が急に真剣な表情で私の名前を呼んだ。
思わず背筋がぴんとしてしまう。
「な…何?」
沖「君、一君のこと好きなんだよね?」
平「総司!?」
「ななあああ!?」
あ ら た め て き き や が っ た!
こいつ本当に鬼、悪魔!
傷口に塩かけてぐいぐい広げにきたぞ!
沖「ねえ、どうなの。」
平「お前なぁ…今そんなこと聞くか?」
沖「平助君は黙ってて。」
「…。」
わかってるくせに聞いてるの?
それとも何か考えがあるの?
まぁ今更隠したところで何もないか。
「好き…。」
沖「…。」
平「…。」
「だった!」
沖「え?」
「好きだったってことにするの。そう決めたの。だからもう違う。また二次元に戻る。あー…でも恋してみよっかななんて。」
そう。
リセットするんだ。
なかったことにして、またどこかの誰かに恋をしたら、今度はちゃんと最初から頑張ろう。
「じゃ、二人ともまた明日。」
沖「…うん。またね。」
平「また明日なー。」
二人に別れを告げて家のドアを開けた。
とりあえずは…
目の前で心配そうに携帯を握りしめているお父さんを安心させてあげなくちゃね。
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