偽恋ゲーム | ナノ

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土「…ひでぇツラしてやがるが大丈夫か?」


 「先生…生徒に、仮にも女子生徒にひでぇツラとか。」


そんなに今の私は顔色が悪いのだろうか?
寝不足もあるけど嫌がらせが終わった安心感で気が抜けたのかも。いや、それ以上にあいつがあんなこと…やめよう。考えない。


土「いつもだったらたっぷり課題をくれてやるんだがな。」


自分のデスクに置かれている私にとっては致死量のプリントの山をとんとんと叩き、土方先生は意地悪そうに笑った。


 「いつもだったら?」


土「何かあったのか?最近お前様子が変だったぞ?」


 「土方先生…。」


やだ、何それ惚れる。


土「それだけはやめろ。」


 「え、もれてました?心の声。それにしてもふるの早くないですか?先生、もう少し禁断の恋とか楽しみましょうよ。」


土「断る。なんでよりにもよってお前と禁断の恋しなきゃならねえんだ。お前斎藤の彼女だろ。」


 「ドロドロの昼ドラ再現できますねっ!」


土「…課題だされてえのか?」


 「嘘です。あの…色々ありましたが落ち着きましたので。」


そう言うと土方先生はため息をついて私に背を向けた。手をひらひらさせてさっさと帰って寝ろと言う。


 「うううう土方せんせーーー!これからは真面目にがんばります!沖田討伐に力を貸します!ガンランス準備しておきますー!!」


土「うるせえ!職員室で叫ぶな!出てけ!!」


もー。
土方先生、もう少しデレてくださいよー。
と呟いた私に土方先生が大量のプリントを握りしめてこっちを見たので一目散に退場しました。




 「そういえば…どっか寄るって言ってたな。」


沖田がそんなことを言っていたのを廊下で思い出す。
斎藤もいるんだよね…なんかどうしていいかわからないんだけど。
でも下手に避けたら不審だし。


どうしようかななんて悩んで突っ立っていたらいきなり肩を叩かれた。


 「ひっ!」


平「驚いた?」


 「平助!驚くよ!」


平「へへっ。ぼーっとしてるからだって。どうしたんだよ。」


 「あ、土方先生に呼び出しを…。」


平「お前、また授業中に叫んだだろ?聞こえてきたぜ?」


…死にたい。
他のクラスの平助に聞こえているということはつまりそれだけいろんな人に私の叫び声が…。


平「今日総司と一君にどっか遊びに行こうって言われたんだけど真尋も行くんだろ?」


 「ああ、うん。」


平「でもさ、大丈夫か?お前顔色悪いぞ?」


 「え?大丈夫大丈夫!優しいね、平助は。」


あ、沖田も斎藤も心配してくれてたな。いつもあの二人から優しさなんて貰わないから聞き流してたけど。


 「ほんと良い奴…。」


うん。あいつらとの違いはそこだよね。


平「まぁ…いつも良い奴止まりなんだよなぁ。」


 「え?」


平「よく言われるんだよ。仲の良い友達、良い人。それ以上には見れませんってさあ。」


はぁと深くため息をつく平助にまぁ確かにその通りかもと思ってしまったよ。ごめんなさい。



 「いやいやっ!平助はそこが魅力的というかなんというか…。」


平「いいって…余計に傷つくから。」


ああ、拗ねてしまった!
いかんいかん、そうだよね、こういう男の子はそう答えちゃだめだよね。振り絞れ!乙女ゲーム力!


 「ほら、何ていうか!そういう平助、私好きだよ!!!」


平「はははっ。ありがとな…。あ。」


 「え?」


平助が私の背後に視線をずらした。
振り向こうとした瞬間、世界がぐにゃりと歪む。


平「真尋!?」


少しずつ景色が白くなって、平助の焦った顔が見えて…そのまま、真っ暗になった。

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