偽恋ゲーム | ナノ

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あの嫌がらせがあった日から一週間がたった。
黒板に何か書かれたり、ノートに落書きされることはなくなったけど…。


 「またか。」


毎日毎日律儀に机には手紙が入っていた。
もちろん手書きじゃない。


――早く別れろ
――みんなを騙して最低だ


簡単にいえばこんな内容がずーーーーっと書かれている。


朝登校すると必ず入っているそれを千や沖田に見つからないようにするのはけっこう大変なことだ。


それにしても、どうしてこの犯人は私達が付き合っていないことを知っているんだろう。


確かにみんなを騙しているけど…。
でも。
今の私は本当に…。



斎「廣瀬。」


肩を揺すられ我に帰る。
顔をあげると斎藤が立っていて、他には誰もいなくなっていた。


 「あれ?」


斎「次は美術だろう。さっさと移動するぞ。」


 「あ…うん。」


立ち上がった瞬間に手紙が落ちる。
慌てて拾い上げると斎藤が怪訝な顔をしていた。


斎「…どうかしたか?」


 「ううん!なんでも!急ぐ急ぐ!!!」


斎「?」


良かった。どうやら見られてない。
私は手紙をノートに挟むと机の中に突っ込んだ。そして急いで美術の準備をすると斎藤を引っ張るようにして教室を出る。


斎「おい!走るな!」


 「だって急ぐんでしょ?」


斎「走らなくても間に合う。…それより。」


 「え?」


斉藤を引っ張るように廊下を歩いていたのに突然立ち止られて前のめりになる。
今度は逆に腕を掴まれて私は後ろを振り向いた。


 「何?」


斎「何かおかしくないか?」


 「え?」


斎「最近のあんたはいつも以上におかしいと言っている。」


 「いつも以上ってどういう意味だ。」


斎「何かあったのか?」


何かあったのかって。
言えるわけないよ…。


 「何もないよ?まあしいていえば…。」


斎「なんだ?」


 「新太君の新しいゲームやりすぎて寝不足なぐらい?」


斎「…さっさと行くぞ。」


 「ちょっと!待ってよ!」


ぱっと私の腕を離して斎藤が歩き出した。
慌てて後をついていく。

全くあんたってやつは…とかなんとか斎藤が呟いていたけど、これで良かったよね。


斎藤が悪いわけじゃない。
罪悪感とか持ってほしくないし、関係が変に崩れるのも嫌だから。

だったらこのままで。
このままでいたい。




その日の放課後もいつの間にか手紙が入っていた。もう中身を確認するのも面倒なんだけど一応見ないわけにもいかず。


 「はあ…。」


相変わらずため息がでるような内容だった。
今までは朝だけだったのにどうやら一日二回は送りつけてくることになったらしい。


しかも手紙だけじゃない。
昨日から携帯の方にメールもきている。拒否してもアドレスを変えて送られてくるから厄介だ。



 「さすがに…滅入るわ。」



千には先に帰ってもらい教室には私一人だけになっていた。



 「どうしよっかな。」


正直今までの私だったら滅入るどころか怒りの方が強かったと思う。
なんとか犯人見つけ出して直接文句を言っていたはずだ。


だけど。


嘘をついているのは本当で。
しかも今の私は…斎藤のことが好きになってしまった。

この関係を壊したくなくて、この関係に甘えている。

その後ろめたさがあって何もできずにいた。


でも毎日のようにこんなことがあると…辛くなってくる。


 「私が…悪いんだけどさ。」


携帯を開くと新太君が笑っていた。
いつもならゲームしてたらストレス解消になるっていうのに。


 「らしくないなあ。」


呟きながら差出人不明の手紙を握りしめて机に突っ伏す。



するとガラッと教室のドアが開く音がして私はびくりと起き上がった。

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