偽恋ゲーム | ナノ

▽ 3



千「あ。ちょっと寄りたいところがあるんだけどいいかしら?」


放課後、私達は昼休みに話していたファーストフード店に向かっているところだった。
部活がないからと斎藤や沖田、平助も一緒に来ていた。


沖「どこ?」


千「こーこ。」


そう言って千が指さしたのは雑貨屋さんだった。家具から小物からアクセサリーまでいろいろ揃っているお店で友達の間でもけっこう人気がある。


 「何か買うの?」


千「真尋のプレゼントよ。」


 「え!?」


千「真尋が欲しい物買ってあげる!物によってはお揃いとかもいいわよねー。」


そんなことを良いながら千は私を引っ張って店に入って行った。
男子達も後に続く。


店内はアップテンポの曲が流れていて、私達のように学校帰りの高校生がけっこう入っていた。
何かいいもの探してらっしゃいと言われて店の中をうろうろする。


 (あーキャンドルとかも可愛いな。マグカップもいいし…。)


いろいろ見ていると一つ目についたものがある。
月と星の飾りがついたシンプルなネックレスだった。値段もそんなに高くはない。


沖「へえ、真尋ちゃんもそういうの興味あるんだ?」


 「うわっ!?」


いつの間に後ろにいたのか、沖田が微笑んで立っている。うん、知らない人が見たら目を奪われちゃうんだろうなってぐらい爽やかな笑顔。
知らない人がみたら…ね。


 「べ…別に。」


沖「ま、真尋ちゃんにはこっちがお似合いだよ。」


 「え?」


そう言うと沖田は私にいきなりメガネをかけさせた。はいっと近くにある鏡を渡される。


 「これ…。」


沖「今流行りのパソコン用メガネだって。真尋ちゃんゲームするし、パソコンもするでしょ?頭だけじゃなくて目まで悪くなったらどうしようもな…。」


 「ちょっとー!失礼すぎるでしょうがああ!」


沖「あはははは。ま、そういうことだから。色、これでいい?」


再び私からメガネを外すと沖田はそう確認してレジのほうへ向かおうとした。


 「ちょっと!それ…。」


沖「ん?プレゼントだけど?ちょっと早いけどね。」


そう言って沖田はスタスタとレジへ向かってしまった。
何それ。
ちょっとだけ見なおしちゃったよ、沖田。
沖田ファンの気持ちが少しだけわかった気がする。


沖田の背中を見ていると今度は平助と千に声をかけられた。


千「真尋、いいものあった?」


 「え?あ…。」


一瞬ネックレスが頭をよぎったけど、私は別の棚に置かれていたマグカップを指さした。


 「あれがいいな。」


千「わあ!可愛いわね。真尋、お揃いにしていい?色違い!」


 「うん!もちろん!!」


千「じゃあ私これ買ってくる!」


千はそう言うとマグカップを両手にとりレジの方へ歩いていった。


平「なあなあ見てこれ!」


 「どうしたの?」


平助が嬉しそうに手を突き出す。
そこにはガラスでできた小さなスライムがついたストラップがあった。


平「これけっこう可愛いよな?お前好きそうだと思って。」


 「うん!これ良い!!」


平「よーし、じゃあ俺これ買ってくる!ちょっと待っててなー。」


そう言って平助も沖田や千が並んでいるレジの方へ向かって行った。


なんだか嬉しいな。
みんながこうして私のことを考えてくれてるって。プレゼントを貰うとか貰わないとか以前に気持ちが嬉しい。


そんなことをしみじみ思いながら目の前のネックレスを自分で買おうか迷っていた時。
足音が一つ後ろから聞こえてきた。


振り向かなくてもなんとなくわかる。
これはきっと。


 「斎藤?」


斎「…あんたはそれが欲しいのではないのか?」


そう言って斎藤は私が見ていたネックレスを指さした。
ずっと見ていたのがばれているらしい。


 「いや…違う違う。こんな可愛いの、ガラじゃないし。似合わないって。」


斎「廣瀬…。」


 「ほら、斎藤。みんな買い物終わったし、行こう?」


ネックレスを見ていたことを気付かれたのが何だか恥ずかしくて私は斎藤を引っ張った。
だっていつもゲームとかマンガで騒いでいる私が!
ネックレス…だと?って思われるじゃん、絶対。


会計が終わったみんなと合流し、そのままファーストフード店へ向かう。
そこで急遽小さな誕生会が開かれ、私は三人からプレゼントを貰うことになった。


おめでとうとか、来年はもっとちゃんと祝おうとか楽しく話している中。
何故か斎藤の顔はあまり見れなかった。

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