▽ 3
「斎藤先輩!あの…ちょっといいですか?」
二人で声がした方を見るとそこには多分後輩と思われる女の子が立っていた。
手には手紙を持っていて頬を赤らめている。
これは。
もしかしなくても告白ですよね。
「あ…じゃあ私あっち行ってるよ。」
斎「いい。」
離れようとした私の手を斎藤は掴んだ。
「え?斎藤?」
斎「何か用だろうか?」
「あ、あの…私、斎藤先輩が…。」
彼女の位置からは斎藤が私の手を掴んでいるのが見えないようだ。
多分斎藤の後ろに私が立っているぐらいにしか見えていないのだろう。
だとしてもよく告白できるな。
恋する乙女はすごいね。
下を向きつつもゆっくりと言葉を紡ぎながら、手紙を斎藤に差し出していた。
斎「申し訳ないが誰かも分からない者と付き合うつもりはない。」
「ちょっと斎藤!」
その返しはひどくない!?
好きな人がいるとか嘘ついておけばいいじゃん。
彼女の目は大きく開き、少しずつ潤んでいく。
ああ、泣いたらどうするのよ。
「あの…そうですよね…ごめんなさい。」
斎「それに。」
掴まれた手が離れたと思ったらいきなり肩を抱かれた。
斎「俺はもう付き合ってる人がいる。」
「ん?」
「あ…そうだったんですね!すみませんでした!!!」
そう言うと彼女は半泣きで私たちの前から走り去ってしまった。
残されたのは肩を抱かれた状態の私と、何も言わない斎藤。
「あれ?なんか私の耳がおかしくなければ付き合っている人がいるって聞こえたんだけど。」
斎「ああ、言った。」
「私の目がおかしくなければ彼女はその相手を私と勘違いして去っていったようだけど。」
斎「ああ、間違いないだろう。」
「私の頭がおかしくなければ斎藤は私と付き合っているって言ったみたいなんだけど。」
斎「言ったが?」
「………は?」
斎「あんたと付き合っていると言ったが。」
「…はあ!?何で!?意味がわかんないんだけど!!!」
斎「廣瀬。」
「何よ!」
斎藤に真っすぐ見つめられる。
…顔が良いからなんとなく目を逸らしてしまった。負けた気がする。
斎「さっきの頼み事だが。俺と付き合ってほしい。」
「………。」
何それ。
何その展開。
そんな展開はね、
「ゲームとマンガの世界だけで十分だ!」
いきなり叫んだ私に斎藤は思わず肩から手を離した。
そして距離を置く。
斎「何だ!?」
「何それ!いきなり普通の女子があんたみたいなモテるイケメンに告白されるなんてありえないから!」
斎「普通…。」
「そこつっこむか!?嫌な奴だな!」
普通の女子というフレーズに目を細めたよこいつ!どうせ普通じゃないわ!
「なんで私と付き合いたいなんて思うの。絶対ありえないじゃん。まともに話したのも今が初めてなのに。」
斎藤が女子と話してる所なんてほとんど見たことがない。
私も挨拶程度しかしていなかったし、こんなに話が続く奴だと思ってもいなかった。
すると斎藤はゲームに視線を落とし、そのまま口を開く。
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