▽ 3
千「それにしても、連続ですごいわね。斎藤君のファン。」
お弁当の卵焼きを口に放り込みながら千が呟いた。
沖田もいちごみるくのパックに口をつけて続ける。
沖「一君がこんな感じだからさ。ファンのみんなも手を出しづらかったのに急に彼女ができちゃったもんだからみんな苛々してるんじゃない?」
「苛々って…だからって当たるのはよくないでしょ。本人に言えば良いのにさ。」
斎「女子に多いではないか。直接言うことはできないが裏でこそこそやるのは得意だろう?」
パンをちぎりながら口に入れて淡々と語る斎藤に思わず反論してしまう。
「ちょっとー。みんながみんなじゃないからね!?」
斎「…わかっている。」
あれ?意外だな。
前はもっと女子に対してきついイメージがあったのに。
斎「だが、現実はああいうことが多いだろう?一人では何もできないもの同士、ああやって群れて誰かを攻撃するではないか。最低の行為だ。」
沖「一君久しぶりにきっついね。」
「でた…黒い斎藤。略して黒藤。」
斎「人を砂糖のように言うな。」
普段みんなの前ではクールだけど紳士っぷりを発揮してるくせに。
千「でもさっきの子可愛い子よね。あれじゃ勘違いされても仕方ないわ。」
沖「まあね。少なくとも真尋ちゃんよりは説得力あるよね。一君の彼女っていっても。」
「沖田、ちょっとツラかせや。」
沖「別に貸してあげても良いけど僕手加減しないからね?」
「くっ…黒い沖田、略して黒田。」
千「もうそれ他人じゃない。」
斎「阿川は俺と同じ風紀委員だ。委員で一緒にいることが多いから間違えられたのだろう。」
なるほどなあ。
そんでもって彼女のあの視線。
ファンクラブの人達が気付かないはずないもんね。
斎藤は気付いてるのかな。
千「それにしても。良いタイミングで助けてくれた斎藤君、かっこよかったわ。」
斎「なっ…何を言って…。」
沖「うんうん。この前の平助君も良かったんだろうけど。一君スマートに対応するもんね。さっすが彼氏〜。」
斎「茶化すな総司!」
ああ。また始まったよ。
二人の斎藤をいじる会。
特にご飯を食べ終わった沖田なんてやることないから本格的にからかいだしたぞ、あれ。
そんな三人を眺めながら、私はお弁当を食べていた。
少しだけ複雑な気持ちになりながら。
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