▽ 2
「がんばるよ!!」
千「真尋…買った方が安かったってことにならないようにね。」
すでに呆れ顔の千の横で私はお菓子のUFOキャッチャーに挑戦していた。
うまい棒がっつり持って帰りたい!!!
千「私他のUFOキャッチャー見てくるね。」
「はーい。千の分もとってみせるよ!」
千が移動したのを見てから目の前のUFOキャッチャーを始める。
――数分後
「くっ…調子が悪い!」
何度か挑戦したけれどうまい棒はなかなか落ちてきてくれなかった。
うーん、このままじゃ買った方が安いって言われちゃうよ。
でも諦めたくないし。
斎「あんたは…まだやるのか。」
「斎藤。」
後ろを見ると斎藤が少し離れたところに立っていた。
斎「俺が見ている間、その菓子は全然穴に近づいていないようだが。」
見ていたのか!?!?
せめて声かけてよ!恥ずかしいじゃん!!!
「ちょっと調子が悪いの。」
斎「調子の問題ではない。そのアームの力ではその菓子は持ち上げられないんだろう。」
「え?」
私の横まで歩いてきてアームを指さす。
斎「あれは力のないタイプのアームだ。このような大きな菓子は持ち上げるというよりアームをあてて転がしながら穴に近づけていくほうがいいだろう。」
「斎藤って…もしかして得意なの?UFOキャッチャー。」
斎「いや、数回しかやったことはない。だが何度か見れば法則は理解できる。あとは角度や力を計算すれば…。」
「わーわー!そんな難しいこと考えながらゲームしたくない!」
斎「…少し考えてやったほうが効率がいいだろう。」
「そりゃそうだけど。」
斎藤はお金を入れるとUFOキャッチャーを始めた。
すると二回でうまい棒は穴へと落ち、私の手の中へやってきた。
「…すごい。」
斎「別に何もすごくはない。」
「斎藤!あっちのチョコもとって!!」
斎「…まだ食べるのか。」
「違うよ!千と分けるの!」
斎藤を引っ張って大きなチョコが置いてあるUFOキャッチャーまで移動する。
(ん…?)
すると斎藤が隣のUFOキャッチャーを見ているのに気がついた。
中を見ると小さな猫のぬいぐるみがたくさん詰まっている。
掌サイズでストラップにもなりそうなやつだ。
「斎藤?」
斎「…。」
「斎藤??」
斎「!…すまない。これをとるのか?」
「うん。」
私がお金を入れると斎藤はあっさりとチョコもとってくれた。
こうまで見事にとれると少し頭を使ってゲームしてみるかという気になる。
「あ、斎藤。あれ、とれる?」
斎「これか?」
私は隣の猫のぬいぐるみを指さした。
すると斎藤は少し考えるように全体を見てUFOキャッチャーを開始する。
「わっ!二個とれてる!!」
アームに二つぬいぐるみがひっかかり穴に落ちていった。
出てきたのは三毛猫と黒猫。
ふにゃりと可愛らしい顔をしている。
「はい、斎藤。」
斎「?」
私は斎藤にその二つを差し出す。
すると斎藤は頭の上に?マークを浮かべたような顔で私を見ていた。
「これ、欲しかったんじゃないの?」
斎「俺が!?」
「だって見てたじゃん。猫好きなのかと思って…。」
斎「猫は好きだが…このようなものは…。」
いやいや。
このようなものはとか言いながらすっごい見てるじゃん。
めちゃくちゃ猫好きじゃん。その感じ。
「可愛いし部屋に置いておけば?」
斎「いい!あんたが持って帰ってくれ。」
「なんでー。いいじゃん。猫好きでも。今時男の子だって可愛いもの好きな奴多いんだから気にしない。」
斎「俺はこういうものが似合わないとよく言われる。」
私は斎藤の手に三毛猫を無理やり押し付けた。
「似合うとか似合わないとか、他人が決めることじゃないじゃん。好きなものを好きって言って何が悪いの?」
斎「…。」
「自分の好きなもの、似合うものを決めるのは自分だよ。だからこれは斎藤のね。黒猫は私がもらうから。」
斎「廣瀬…。」
「あ、沖田と千が大きいぬいぐるみに挑戦してるよ!見に行こう!!」
斎「…ああ。」
その後、斎藤の助言もあって沖田が大きなぬいぐるみをとることに成功した。
そのぬいぐるみは千のもとへ。まあ沖田が持ちかえっても困るだけだよね。
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