偽恋ゲーム | ナノ

▽ 3



 「ちょっと、斎藤も何か言ってよ。だめでしょ、風紀乱しまくりでしょ。」


斎「…総司は。」


 「?」


目の前で説教されている沖田を見ながら斎藤が口を開いた。


斎「本気じゃなくてもいいと思っている者にはああして軽く付き合うが、自分のことを純粋に思ってくれる者にそういうことは決してしない。」


ん?それはつまり。
遊びでもいいわって言ってくる女の子にだけ軽く付き合うけど、そうじゃない子には簡単に手を出さないよってこと?


 「相手を選ぶの?」


斎「ああ。俺が知っている限り、真剣に交際を申し込んでくる者はきちんと断っている。」


 「へえ…。」


千に笑いながら謝って、さらにそれで怒られている沖田を見てちゃんと考えているんだななんて思ってしまう。


 「ん?でも…それでもさ、良いことにはならないよね。いろんな子と遊んでるって…。」


斎「まあ、それは俺も同感だ。」


 「ほらやっぱり!ちゃんと指導しなよ、風紀委員!!!」


斎「その場合、あんたのそのゲームをもう一度とりあげることになるがいいのか?」


 「…見逃してください。」


またとりあげられたらたまったもんじゃない。
私は静かにカバンにゲームをしまった。



斎「…そろそろ昼休みが終わる。戻るぞ。」


 「え?あ、はいはい。千ー沖田ー行こう!」


沖「はーい。」

千「もう、沖田君ったら…。」


まだ怒りモードが治まらない千と苦笑いの沖田も立ち上がり、机を元通りに戻すと私たちは自分たちの教室へ戻って行った。







午後の授業って何でこんなに眠いんだろう。
文字が二重になりかけていた日本史の教科書から一度目を外し、窓の外を見てみる。


 (あーいい天気。外行きたい。)


今日は千とどっかよって帰ろうかな。
テストも終わったし良いよね。

授業と関係ないことを考え出した瞬間、眠気がとぶんだからおかしなものだと思う。


千の方を見ると真剣にノートをとってるし、沖田は完全に夢の世界に旅立ってる。



 (…やっぱり斎藤は起きてるね。)


斎藤は前の方の席だし、ただでさえ寝ることなんて無理だろうけど、あいつの場合たとえ一番後ろの席でも寝ないだろうな。



―偽恋ゲームしてる人に言われたくないなあ―



偽恋か…。
昼休み、沖田に言われたことを思い出した。


いつか私も本当の恋をするのかな?
ドキドキして、苦しくて。
傍に居たいとか思っちゃって。
悩んで泣いたりするのかな?


いつか、どこかの誰かに。

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