偽恋ゲーム | ナノ

▽ 2



千「そりゃ恋は…相手のことが好きで、ドキドキして、苦しくて…ってやつでしょ?」


 「なるほど。沖田の恋の定義は?」


沖「うーん、一時の気の迷いみたいな?」


千「ええ!?」


 「あんた…どんな恋してるの。」


沖「さあ?まあ千ちゃんの言うものが恋なら、僕はまだ恋してないかもね。」


千「え?だって沖田君、今まで何人か付き合ってるよね?」


沖「まあ、僕は来る者拒まず、去る者追わずだから。」


 「最低…。」


沖「そう?僕のことを好きって言ってくれるからいいかなって思って付き合うんだよ。別に誰も傷つかないじゃない。」


 「そんな簡単に付き合うなんて…。」


沖「偽恋ゲームしてる人に言われたくないなあ。」


 「偽恋ゲーム?」


沖「そのゲームじゃないよ、一君と。」


 「だ!だってそれは…。」


斎「総司、それは俺が頼んだことで廣瀬は関係ない。」


単語帳を見ていたはずの斎藤が会話に入ってきた。


沖「知ってるよ。ちょっとからかっただけ。」


 「おい!」


沖「だって真尋ちゃんおもしろいんだもん。」


千「もう、沖田君は…。」


 「斎藤の恋の定義は?」


何て答えるんだろうとふと気になって隣の斎藤に聞いてみた。
すると斎藤はちらりと私を見た後、ポケットから携帯を取り出し、何かのアプリを起動させて私に見せる。



 「…恋:特定の異性に強く惹かれること。好き、傍に居たいという満たされない気持ちを持つこと。…って辞書じゃん!!!」


斎「と、書いてあるのだからそういうことなのだろう。」


携帯の画面を消して再びポケットにしまい込んだ。


 「私が聞いてるのは…。」


斎「じゃああんたの恋の定義とやらは何なのだ?」


 「う…。」



斎藤に聞きかえされて思わず言葉に詰まる。
だって私にもわからない。
ゲームやマンガにキュンとはするけれど実際に誰かを好きになったことがないんだもん。


――ピピピピピッ



沖「あ、ごめん。僕だ。はい、もしもーし。」



沖田の携帯が鳴って会話が途切れた。
正直助かったと思ってしまう。



沖「今日?いいよ。どこ行きたい?」


どうやらデートの約束??
あれ、沖田って今誰かと付き合ってたっけ?


電話を切り終わった沖田に思わず聞いてしまった。


 「今の彼女?」


沖「え?うーん、友達以上恋人未満?」


 「へえ。じゃあもうすぐ付き合うの?」


沖「いや、別に遊び相手だからそういうのじゃないかな〜。」


 「…去れ!変態悪魔!けがらわしい!」


沖「ひどいなー。別にお互い了承してればいいじゃない。」


ケラケラ笑っている沖田に隣にいた千のお説教が始まった。


千「…沖田君、ちょっとそこにちゃんと座りなさい。」


沖「え?千ちゃん??ちょっと…怖いんだけど。」


いいぞ、千。
そうだ、こらしめてしまいなさい。

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