▽ 1
新「好きだよ、真尋。」
「っーーーーー!!!」
ふにゃりと柔らかい笑顔で言われてキュンとした。
何だその笑顔!
その優しい声!
反則だ!!!!
バシバシと自分の頬を叩く。
そうでもしないとこのニヤニヤが止まらない。
だけど私と新太君の甘い時間を冷たい視線が阻んだ。
沖「…気持ち悪いよ、真尋ちゃん。」
イヤホンをしていたから沖田の声は聞こえなかったけど…聞こえなくてもわかる。
絶対悪口言われた。
耳からイヤホンを外してゲームをスリープモードにした。
「何よ、沖田。私と新太君の甘い時間を邪魔しないでくれる??」
沖「甘い…ねえ。」
「何!」
千「はいはい、ケンカしないの。斎藤君も止めなさいよ。」
斎「…好きにさせておけ。」
隣に座っていた斎藤は単語帳から一瞬だけ目を離して私と沖田を見た後、一言呟いてまた視線を戻した。
最近は四人でお昼を食べるのが習慣になっていた。教室や屋上でも食べていたけれど一番多いのが空き教室。
誰もいないし、誰も来ないからこうやって自由に過ごせるわけで。
「だってー。久しぶりにゲーム返ってきたんだもん!!!」
期末テストが終わってめでたく斎藤からゲームが返ってきた。
しかもテスト勉強のせいかどの教科も今までで一番良い点数をとったもんだから両親もご機嫌で家でも堂々と遊べるのだ。
うん…まあそこは斎藤に感謝かな。
沖「ゲームで恋愛もいいけどさ。そろそろ三次元に戻ってきたら?戻れなくなるよ?」
「もう戻れてないよ。いっそ戻らなくて良いからあっちに行きたいよ。」
沖「真尋ちゃんがたとえその世界に行けたとしても、そんないろんな男の子にもてるわけないでしょ。」
「うるさっ!ゲームぐらい夢見させてよ!」
千「あーもううるさいうるさーい!真尋、沖田君、静かにする!」
二人で思わずはいと答えた。
千は怒ると怖いんだもの。
千「でも、沖田君の言うことも一理あるわよ、真尋。現実世界でときめくのも大切だわ。」
千が読んでいた雑誌を机に広げた。
そこには恋愛特集の記事がたくさんのっている。
―好きになった瞬間―
―私たちが付き合ったきっかけ―
―理想のデート―
「…リア充爆発し…。」
千「はいはい、いいから読んでみて。」
千に言われて雑誌に目を通した。
同じぐらいの年の子達のリアルな声。
今までなんとも思っていなかったのに優しくされてドキっとした。
部活を頑張ってる姿にキュン。
名前で呼ばれて意識しだした。
「あーどれもこれもよく聞く話だね。」
千「真尋はどうなのよ??」
「え?」
千「そういうことないの?今まで。」
「ない。」
沖「即答だね。」
「だってないもん。」
千「もー。」
千が額に手をあててため息をついた。
確か千は先輩と付き合ってるんだよね。
彼との話をする時の千は乙女だもんな…。
「そもそも恋って…なんだろうね。」
私の一言に千と沖田が目を丸くした。
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