偽恋ゲーム | ナノ

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一度やりはじめると集中するのはどうやらゲームも勉強も一緒らしい。
たまたま斎藤の方に目をやると彼の手が止まっていることに気がついた。

彼の視線の先を辿ると本棚のほうへ向いていた。


 「どうしたの?」


斎「いや、女子の部屋はごちゃごちゃしているイメージだったのだが…。」


 「ああ、意外と片付いているって?物も少ないしマンガとかゲームとかきちんと保存しておきたいタイプなんだよね、私。」


斎「ああ。あんたは普通じゃないということを忘れていた。」


 「おい、ケンカ売ってんのか。」


斎「本棚の中身もだいぶバラバラだな。」


普段見慣れているから何も考えたことがなかったが確かにジャンルはバラバラだ。
少女マンガから少年マンガまで気にいっているものが並んでいるし、小説もあれば図鑑もある。


斎「てっきりマンガだけかと思っていたが小説も読むんだな。それからあれは…何の図鑑だ?」


 「え?見る見る?見ちゃう〜??」


本棚のほうへ斎藤を引っ張って二人で座り込む。


 「ふふふ。菌の本!!」


斎「…金?」


 「違う、金じゃない。菌!」


パラパラとめくると斎藤の眉間に皺がよる。
あ、古典の土方先生みたい。


 「菌って昔はきのこのこと言ったんだよ。カビとか酵母も菌なんだけどさ。知ってる?椎茸は学名がレンチヌラ・エドデス。日本で発見したから江戸ですかもしれないんだって〜。おもしろいよね。」



斎「てっきりマンガとゲームにしか興味がないと思っていたが…。」


斎藤が目を丸くして私を見ていた。
失礼だな。


 「別に他にも興味はあるよ。星とかも好きだからその図鑑もあるし、こっちなんて人体図鑑だよ。植物図鑑もある。」


斎「小説のジャンルもバラバラだな、あんたは。」


 「好奇心旺盛と言ってくれたまえ。」


図鑑を閉じてもとの場所へ戻す。


 「勉強は範囲によって好きなところと嫌いなところあるけど。とりあえず挑戦はするよ、できるかどうかは別として。」


斎「そうだったのか。」


 「だって興味ないって言うのは簡単だけどそれって勿体ないよ。知らない世界を知るのは楽しいし知識は無駄にならない。マンガもゲームも意外と学ぶこと多いしね。」


斎「俺はあんたから学ぶことがあるようだ。」


 「ええ!?」


な…何言っちゃってんの!?
学年トップの秀才が。


斎「自分の世界を広げたいと思うのに俺は好き嫌いをしすぎているようだ。」


そう言って斎藤は再び本棚に手を伸ばす。


 「あ…そう。好きなの読んでいいよ。」


珍しく褒められた気がしてどうしていいかわかんない。
本棚の前に斎藤を残してテーブルのほうへ戻った。
だってなんか恥ずかしい!


斎「……。」


 「え?」


何か斎藤がぶつぶつ呟いている。
どうやら本を読んでいるらしい。


 「何読んでるの、斎藤。」


斎「…お前と俺は、赤い糸で結ばれていないのか?」


 「…は?」


今なんと?
後ろから肩に手を置こうとしたけど思わず伸ばした手が固まる。


斎「だったら、俺が。何がなんでも結びつける。…だから、俺と一緒に…。」


 「さささささ斎藤!?!?」


大声で名前を呼び、固まった手を無理やり動かし斎藤の肩を掴んで揺らした。
すると不機嫌そうに何だ?と振り向く。
その手には一冊のマンガ。

純愛ブームで一番売れた少女マンガ【赤い糸を紡ぐ】。ドキドキとキュンキュンがたくさんつめこまれたマンガだ。


何故それをとった。
何故音読した。


斎「自分が絶対に買わないであろう本を手にとって読んでみたのだが…女子はこういうものが好きなのか。」


 「お願いしますから違う本を読んでください。」



斎「何故。」


何故じゃねえ、似合わなすぎるからだ。
沖田に言ったら爆笑間違いなしだ。



その後、斎藤に引っ張られテーブルに戻るとほぼ同時に私の大声に反応したお父さんが飛び込んできたけどその頃には二人とも勉強を開始していた。
きょとんとしたお父さんをお母さんが引きずるように連れ戻すのを見てまた勉強を開始する。


と、思ったら斎藤がマンガの続きを読みだした。え、気にいったの?少女マンガ。


もう別に止める必要もないかなと思い、こっそりマンガに集中している斎藤の写メを撮って沖田にメールしておいた。



月曜日、開口一番に斎藤から怒られたのは言うまでもない。


つづく




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