偽恋ゲーム | ナノ

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夕飯を食べ終わってリビングでくつろいでいると携帯の着信音が響き渡る。


 「うー今いいとこなのに…誰?」


私の好きなお笑いコンビが久々にネタやってるんだけど。
目はテレビにやったまま手を伸ばして携帯を掴む。



そこには斎藤 一と書かれた画面が光っていた。



 「うえぇっ!?」


思わず携帯を落としそうになったのを必死で掴んだ。私の声と動作が気になったのか両親がそろって私の方を向いた。



 「…もしもし。」


斎『もしもし。』


 「どうしたの…電話がくるなんて明日地球は滅び…。」


斎『切るぞ。』


 「嘘です。ごめんなさい。」


斎『明日なのだが、本当に行っても大丈夫か?』


 「あ。」


そうだ。明日斎藤が来てくれるって言ってたんだ。うちの親に紹介できる。


斎『一時ぐらいでいいか?それから家がわからないのだが…。』


 「あ…学校のすぐ近くで…。」


住所を告げて道を説明すると斎藤はだいたい理解できたらしくもしも迷ったら電話をすると言って切った。



これは一応報告するべきよね。
両親に。


私は晩酌している両親の方を向いて声をかけた。



 「お母さん。」


母「何?」


 「明日、彼氏が遊びに来るよ。」


父「ぶはっ!!!!」


ああ、お父さんもったいないよ、ビールが。
お母さんは目を見開いて私に言う。


母「え?本当にできたの?」


 「だからできたって言ってるじゃん!!」


父「真尋…本当に…彼氏なんか…。」


母「あらやだ!明日来るの?どんな子?どんな子?」


楽しそうだな、母よ。
本当にできたとなったら嬉しいんだね。
そうだよね、初めての彼氏だもんね。
二次元にしか興味がないのかと心配してたもんね。
ごめんね、偽物の彼氏だよ。


 「え?どんな子?」


母「うん。どんな子?」


 「えー…真面目で、風紀委員やってて。」(付き合うフリすればゲーム見逃すって言ってたけど。)


母「うんうん。」


 「成績はトップで先生からも信頼されてて。」(時々毒吐くけど。)


母「うんうん!」


 「女子から人気のイケメン。」(無愛想だし、女子に興味ないけれど。)


母「え!?すごいじゃない。」


父「…真尋、本当に?本当に彼氏が…。」


母「真尋に彼氏ができただけでも嬉しいのにそんなすごい子なの〜??お母さん会うの楽しみだわ!ねえ、お父さん!!」


父「うん…。」


お母さん、お父さん泣いてるけど。
全然楽しそうじゃないんだけど。


なんかこんなに楽しそうなお母さん見てると心が痛い。だって偽物の彼氏だもん。
お父さんは喜びそうだけど。



 「そ…そういうわけだからさ、明日はよろしくね。私もう寝る。」



母「え?もう?早いわね。ゲームやってもいいわよ?」



上機嫌の母からついにゲーム解禁令がでた。
あれ、じゃあ明日来てもらわなくてもいいじゃん。


…と思ったけどそうなると疑われるな。
とりあえず来てもらおう。うん。

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