偽恋ゲーム | ナノ

▽ 4



二人きりにさせないでよ。
どうしていいかよくわかんないんだから。



斎「廣瀬。」


呼ばれて斎藤の方を向くと携帯を突き出していた。ああ、赤外線か。
自分のポケットから携帯を取り出して斎藤の携帯に突き付ける。

一瞬でデータが行き交うと私は電話帳を開き、番号とアドレスが入っているのを確認すると携帯をしまった。


 「お昼は?」


斎「もう食べた。」



そう言うと斎藤は私の横に座る。
誰もいない空き教室に二人きりって…変な噂たたない?
あ、恋人同士ってことになってるんだから問題ないか。



 「ねえ、斎藤。なんで女の子に興味ないの?信用できないみたいって沖田は言ってたけど。」


斎藤はちらりと視線をこっちに向けて口を開く。

斎「陰険で一人では何もできないくせに集団で一人を攻撃する。幼稚でワガママだ。さっきまで楽しそうに話していたと思ったら陰で悪口を言っていたりころっと態度を変える。そういうところが気に入らん。」


 「典型的な嫌な女子だね、それ。でも全員がそうとは限らないよ?」


斎「もちろんそうではない者もいることはわかっている…が。」


 「何、あんた何かされたの?」


斎「直接何かされたわけではないがそういう点がやたら目についたのだ。」


モテる男子は女子のいろんな争いを目にするものなんだろうか??
まあ、女子のそういうところが見えるんだったらあまり騙されることもないと思うんだけどな。



斎「それに、俺に告白してくる者の大半が俺とはほとんど話したこともないのに好きだなんだと言ってくる。俺の中身などはどうでもいいんだろう?そんな奴らと付き合う気にもならん。」



うーん。
確かに見た目だけとかでこられても困るか。
いや、外見が好みってことも重要なんだろうけど、モテる人にしかわからん悩みなんだろうな。



 「まあ、斎藤が女子が苦手なのはわかったよ。別に無理しないでいいんじゃない?まあ外見で好きって言われて実際付き合ったら違いました―とか言われてもショックだよね。そう考えたら怖いわ。」


斎「…その発想はなかったな。付き合ってから違うと言われるというのは。」


 「この自信家め。幻滅なんてさせないぜ!ってか。」


斎「そういうつもりはないのだが…。」


あ。
そろそろ昼休みが終わる。


 「斎藤、もうすぐ昼休みが終わるよ。」


斎「そうだな。」


立ち上がり、机をもとの位置に戻して教室を出ようとした時。


斎「廣瀬。」


 「何?」


斎「…真尋。」


 「はい!?」


斎藤の口から自分の名前がでてきて驚いた。
思わず一歩斎藤から離れる。


斎「名前で呼び合ったほうがいいと言われたばかりだろう。特に周りに人がいるときは。」


 「あー…練習しておく。」


他に人がいないときは名字でいいと言って斎藤は廊下に出ていった。

まあ…慣れないからしばらくは名字で呼ぶと思うけれど。
うまく切り替えられる自信がないよ。
斎藤はできるんだろうな。


 「一…か。」


なんか名字で呼んでいた奴を名前で呼ぶってくすぐったい。


 「練習しなきゃな。…あ。」


そういえば。
もうみんなに知れ渡ったからゲーム返してもらえるんじゃない!?


 「斎藤!斎藤ちょっと待ってー!!!」


生徒がまだたくさんいる廊下を先に歩いている斎藤に呼びかける。
早速名前で呼ぶことを忘れたのか、あんたはと小声で言う斎藤は完全に呆れ顔。
そんなことよりゲーム…と言いかけた時に斎藤が土方先生に呼びとめられた。


くっ…。
私の新太君はまだまだ帰ってこないようです。



つづく




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