偽恋ゲーム | ナノ

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千「そういうことだったの…。」


誰もいない空き教室に忍び込み千とお昼ご飯を食べる。
…何でか沖田もついてきたけれど。


 「そう。だから本当は付き合ってなんかないよ。契約…とは違うな、半分脅しだよあれ。私の大事な新太君が人質になってるんだし。」


早く返してもらわなくちゃ。
私の萌えとか愛とかを補給しないと。


沖「大丈夫だよ、電源落としてる間は寝てると思えば。」


 「黙れ、沖田。今のゲームなめんなよ、朝つければおはようって言ってくれて夜に消そうとするとおやすみって言ってくれるんだぞ!うう…新太君のおやすみが聞きたいよう。」



千「斎藤君におやすみって言ってもらいなさいよ。」


沖「あ、それいいね。そうしなよ。」


心底悲しんでいるというのに二人が飄々と言うもんだから私はパンを飲みこんで反論した。


 「いらんわ!ってか番号もメアドも知らないよ。それにそういう連絡とかが面倒だから私に恋人のふりさせてるんじゃん。」



沖「まあ…一君。女の子はちょっとね。」


千「え?」



沖田がいちごみるくを飲みほして話を続けた。



沖「女の子に興味ないんだよ。」


 「え!?」


女の子に興味がない?
興味が…ない?????


それって…つまり…。
そういうこと?



そうか。
斎藤ごめん。そりゃ大変だったよね。
辛いこともあったよね。
私が話聞いてあげるから!



 「そうだったのか…斎藤、そっちの趣味の方でしたか…。」



沖「ぷっ!あははは!ちょっとちょっと真尋ちゃん!何考えてるの〜?」


沖田がお腹をかかえて笑ってる。
もはや笑い転げる勢いだ。
千はえ?え?と状況が理解できていないようで。


 「え?だって女の子に興味ないってことは、男の子が好きってことじゃないの?」


千「えええ!?!?」


千、驚きすぎておにぎり潰れてるよ!
はみでてるよ!ツナマヨが!!!


沖「ほんっと最高!真尋ちゃん、それ一君に言ってきて!!!あ、やっぱり僕が言おうっと。一君にメールメール!」


 「え?違うの?」


携帯を取り出して目尻に涙をためながら沖田がメールを打ち出した。
息がうまくできていなかったのか深呼吸をしている。


沖「違う違う。そうじゃなくてさ。」


なんだ、違うのか。
悲しむ女子と喜ぶ女子が半々ぐらいいそうだなと思ってたんだけど。


沖「ほら、女の子ってさ。もちろん良い子もいるけど、嫌な子もいるじゃん。そういう子を見て嫌気がさしたんじゃない?信用してないんだよ、女の子を。」


 「良い子もいるけど嫌な子もいるって…それは男子でも同じでしょ?」


沖「まあそうなんだけど。詳しくは一君から直接聞いてよ。」


メールを打ち終わったのか携帯をポケットにしまい、沖田はパンを食べ始めた。


千「でも本当にいいの?真尋。恋人のふり。」


 「うーん…。」


正直のり気ではないけれど。
断る理由も見つからないんだよね。
別に好きな人もいないし、彼氏ができれば家でゲーム解禁になるし。
何より新太君が人質だし。



 「ま、あくまでも恋人のふりだし、私の生活に変化はないからね。」


千「そりゃそうだけど…。」


沖「変化がない…って本当かな?」


 「え?」


口元についたクリームを指で拭いぺろりと舐めた沖田が楽しそうに笑う。


沖「現に朝からみんなに騒がれてたじゃない。一君の恋人になるって自分は変わったつもりはないだろうけど周りはそうは思わないと思うけどな〜。」


 「だっだからって何をするってわけでもないじゃん。」


沖「まあしばらくは偽物の恋人ってことがばれないように注意することだね。そうしないとゲームが土方先生のところにいっちゃうんだから。」



わかってるけど。
別に何もしなくったってばれないんじゃないの?


沖「せめてケー番ぐらいは交換したら?何かと不便だよ、知らないと。」


 「そりゃまあそうだけど。斎藤が教えてくれるかわかんないし。」


沖「大丈夫大丈夫。もうすぐくるから。」


沖田が行ったと同時に教室のドアが開いた。
三人で視線をそっちにやると本当に斎藤が立っている。


斎「…総司、廣瀬に何を言った。」


沖「え?僕は一君は女の子に興味がないって言っただけだよ。」


クスクス笑う沖田とは対照的に眉間に皺をよせて顔をしかめる斎藤。
ドアを閉めて私たちのところまで歩いてきた。


斎「あんたの言い方が悪いから…。」


沖「あはは、ごめんね一君。もう誤解はとけてるよ。…さてと、行こうか千ちゃん。」


千「え?」


沖「恋人同士、二人にしてあげなきゃ。」


言うや否や沖田は千の腕をひいて教室を出て行こうとする。


 「ちょっと!」


沖「あ、一君。ケー番ぐらい交換しておきなよ。それから…。」


教室を出る直前、沖田がふりむいて笑った。


沖「名前で呼び合うぐらいしたら?ただでさえ恋人同士っぽくないんだから。」


そう言うとドアを開けて千と出ていってしまった。

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