今日はホワイトデー。
私の周りは何やら楽しそうです。
義理チョコのお返しを律儀に配ってるやつ。
本命に本命を返すやつ。
ホワイトデーとか関係なく普通にお菓子食べ合ってるやつ。


男子も女子も楽しそうだ。
ああ、羨ましい。
私は一分一秒でも早くこの日が終わってほしいというのに。


だってホワイトデーはどうしてもバレンタインデーを思い出させるから。



私はバレンタインデーに告白というものをした。
隣のクラスの藤堂君に一目ぼれし、藤堂君と仲の良い総司にどうにか協力してもらって少しずつ話せるようになって。

そして意を決してバレンタインに告白することを決めた…んだ…。


放課後呼びだして。
恥ずかしくても目を見て。
自分の思いを伝えて。
チョコを渡す。

簡単なようで難しいその行為をどうにかこうにかすればそれで良かった…はずなのに。




―現実―


「藤堂君!こっこれ受け取ってください!!!」


「え…?」


――パコーン!!!


「いってええええ!」






何でだ。
何でそうなった。
私の手にあったはずのチョコが入った箱が何故か藤堂君の頭にクリティカルヒットした。

確かに藤堂君との距離が手渡しできるような距離じゃなかったことだけは記憶にあるけど。
私の手から放たれた箱のよりにもよって角が藤堂君の頭にぶつかっていた…と思う。


涙目で振り向いた彼に私はごめんなさい!と叫んでその場を走る去ることしかできなかった。



思い出したくもない。
もう埋まりたい。消えたい。
しかも箱の中には好きですってメッセージカードまで入っていたのに。
ああ、燃やしたい、なかったことにしたい。


もちろん藤堂君への気持ちが消えるわけがないけれど、あれから隣のクラスには近づけないし、藤堂君と会いそうになったら全力で逃げていた。


総司に藤堂君とちゃんと話せばって言われてるけど無理無理無理無理。
チョコを投げつけてくる女ってどう考えてもないよ。ないない。


そんなことを考えながら、よく味のわからないお昼ご飯をすませると喉が渇いた私は飲み物を買ってこようと購買へ向かった。
お茶を買って教室へ戻ろうとする途中。
ぐいっと手を引っ張られ近くの空き教室に引きずり込まれる。


「なっ!?え?!ちょっ!!」

「やっと捕まえた。」

「っ!!!!!藤堂君!?」

「なんでずっと避けてるんだよ。俺のこと。」


私の手首を掴む手を辿ればそこには大好きな彼がいて。
少し不満そうな表情に心臓がざわめく。


「あれから何度も話そうとしたのに。」

「えっとえっとですね…。」

「好きって伝えるだけ伝えて逃げるのはなしだろ。」

「だって…私…。」

「ん。」


すると藤堂君は私にラッピングされた小さな箱を渡す。多分…お菓子?


「これは?」

「今日ホワイトデーじゃん。だからお返し。」

「あ…りがと。」

「チョコ、うまかった。それに…。」


どんどん顔を赤くして。
どんどん声が小さくなっていく藤堂君。


「嬉しかったから…その…。」

「それって…。」

「気になってるやつに好きって言われたらそりゃ嬉しいだろ!?」

「!!」

「…ってかっこ悪いよな、こんな言い方。」


ああもうと目元を掌で覆った藤堂君は頭をぶんぶんとふると何かふっきったような目で私を見た。


「俺と付き合ってください!」

「はっはいい!!!」

「…ぶっ!なんだよお前、その返事。」

「藤堂君がいきなりそんなこと言うから…。」



思い切り笑っている彼の顔はやっぱり大好きで。
これからは毎日見られるのかなとか思うとものすごく嬉しくて顔がにやける。


「なあ、今日からは一緒に帰ろうぜ?」

 「え?」


眩しいぐらいの笑顔で彼が私にこう言った。



――お前のこと、もっともっと知りたいんだ。――



(今日も逃げるつもりだったら俺も遠くから投げつけてやろうかと思った。)

(ええ!?あ、でもコブになったら私の絶壁頭も少しはましに…。)

(お前やっぱり少し変だよな…。)







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