沖田家の場合


「総司さん。」

「んー???」

「総司さん…。」

「何??」

「わ…私やりますから。洗濯ものを畳むぐらい。」

「いーの。僕がやりたいの。」


黙々ととりこんだばかりの洗濯ものを畳んでいるのは私の夫である総司さんだ。
休日は家事を総司さんがほとんどこなしている。
平日はさすがに仕事があるから食事の支度や掃除は私がしているけれど、休日になると私はほとんど出番がない。
朝起きれば朝食ができているし、同時に洗濯機はもうまわっている。
昼食も作ってくれるし、夕食だって…。


どうしてこんなに過保護になってしまったかというと…。


「いいの、君はゆっくり横になってて。最近夜目が覚めちゃったりして寝不足でしょ?誰に似たのかお腹の子は胎動が激しいみたいだし?」

「でもですねぇ…少しは動かないと太りすぎちゃうので…。」

「じゃあ後で散歩しようか?ついでに夕食の食材買いに行こうよ。今日は何が食べたい?」

「え?総司さんは何がいいですか?」

「君の食べたいもの。」

「ええ!?最近総司さんそればかり…。」

「やっとつわりが治まったんだからきちんと食べないと。何でも作ってあげるからさ。」


そう言ってにこりと笑う総司さんは妊娠前と別人のようだ。
ううん、妊娠する前から総司さんは優しかったし、いつも私のことを思ってくれているのはわかっていたんだけどね。

家事も手伝ってはくれたけど簡単なものだけだった。ゴミ捨てとか食器洗いとか…。
こんなに何でもしてくれるようになったのは最近のこと。
子供ができたというだけでこんなにも変わるのかと。
最近は私の健康と体重管理まで勉強しているもの。
斎藤さんなら納得できるんだけど総司さんもこんなになるなんて…。


「総司さん。総司さんは毎日お仕事していて疲れてるんですから私がやりますよ?」

「…毎日仕事はしてるけど別に無理してるわけじゃないよ。それに子供が産まれたらもっと大変だろうし…今から慣れておかないとね、家事。」

「そんなことまで考えてくれていたんですか??」

「当たり前でしょう?二人のことなんだから。」

「嬉しいです…。」


妊婦になってから涙腺がゆるくなったのか、優しい言葉をかけられるだけで泣けてしまう。私が涙目になったのがわかったのか、総司さんが洗濯ものを放り投げ私の隣に座って抱きしめてくれた。


「って言うとかっこいいけどさ。一君に言われたんだよね。」

「斎藤さんに??」

「女子は子を宿し、産むだけで大変なのだ。男は何の役にもたたない。ならせめて負担を減らしてやるのが夫の務めだろうって。」

「斎藤さんらしいですね。」

「それに妊娠中、産後の夫の協力がないと妻の気持ちはどんどん冷めるらしい…とか言って脅すんだよ。一君も今奥さんが妊娠してるから必死に調べてるみたい。」

「ふふっ。なんだか可愛い。」


斎藤さんも奥様をとても大事にしているもの。
奥様の気持ちが冷めないように必死なんですね。


「僕は…君にずっと僕を好きでいてほしいんだ。」


すりっと総司さんが頭を私の首元にこすりつける。
あ…久しぶりかも。こんな風に甘えられるの。
最近の総司さんはずっとがんばってるから。


「大変だけどかわってあげることもできないし。だったらできることしなきゃ。ただでさえ子供が産まれたらその子に君をとられちゃうんだから。」

「そんなこと…。」

「男の子だった日にはもう…僕大人げない態度とると思う。」

「ふふ…仲良くしてくださいね。」

「君に似たら可愛いんだろうけどね。」

「総司さんに似ても可愛いです。女の子だったら二人で取り合いしますね。」

「じゃあ女の子がいいかもなぁ。」


そう言って笑いながら総司さんが私のお腹を撫でるとトンと蹴られる。
どうやら私達の会話は聞こえているみたい。


「女の子だとお転婆だろうから僕がよく見ててあげないとね。」

「そうですね。お願いします。」

「悪い虫も早めにつぶさなきゃいけないしね…。」

「お…お手柔らかにね?総司さん。」


笑顔が一瞬怖かったけど大丈夫かな?
でも産まれる前から愛されていて幸せだねとお腹を撫でるとまたトンと蹴られた。



――三人で毎日笑って過ごそうね――




(一君のところ、女の子らしいよ。)

(そうなんですか?もうわかったんですね。)

(うん。なんか今から嫁に行くこと想像したら泣いたって…。)

(斎藤さん…。)





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