―お兄ちゃんは心配性 土方編―



静かに。

それはそれはもう静かに。


多分今なら私スパイになれるんじゃないか?


足音一つたてることなく、私は家の玄関…ではなく。
玄関から一番離れた部屋の窓に立った。


鍵は開けて出てきた。
のんきなうちの両親が閉めるとは思えない。


案の定。


静かに、ゆっくりと窓は開いていく。



「よっしゃ!」



泥棒気分で侵入し、部屋をでて、自分の部屋へ向かおうとすると。


「おせえ。」

「ひぃ!!」


背後から声がした。


なぜだ!?


なぜ現れる!!!


誰が何のために玄関をよけて家に入ったと思っているんだ!!!



「どうせ玄関から入ることはしないだろうと思っていたが、本当に窓から入る馬鹿がいるか。」

「とっ歳兄。どうして?」

「てめえが門限守らねえから、俺が毎度毎度出迎えてやってるんじゃねぇか!!!」

「ぎゃああ!!」



雷が落ちました。



いやいや、門限って。


私もう20歳だよ?


社会では大人と認定されているのに、どうして門限が夜の九時なわけ??


「だだだだだって友達とご飯食べてたら…そのぉ…話が盛り上がって。」

「電話かメールの一本でも入れやがれ!」

「ごもっともですー!!!」


あまりの剣幕にいつもいつも謝ってしまうんだ。
で、仕方ねえやつだな、さっさと風呂入ってこいって言われていつもは終わるんだけど。

「何の連絡もなしに遅くなったら心配するだろーが!この辺が物騒なのわかってんだろ!」


説教延長入りましたー。



「それはそうだけど。私ももう二十歳だよ!?もう少し自由にさせてよ!」

「遊んでくるのは構わねえ。連絡しろって言ってんだ!」

「うぅ…。」



私女なのに。
歳兄に口げんかで勝てた試しがない。



「別にいいじゃん!歳兄は本当のお兄ちゃんじゃないんだから、私のことそんなに心配しなくていいんだって!大丈夫だから!!」



口から言葉が飛び出した。



しまった。


よく考えたら、最低じゃない?私。


あ。


歳兄。


眉間の皺が深くなる。


呆れられた…かな?



でも本当のことで。
私達は血のつながった兄妹じゃない。
歳兄は厳しいけど優しい。
大好きなお兄ちゃんなのに。


「そうかよ。」

「あ…歳兄。」


絶対傷つけた。


「わかった。」


歳兄が一歩、一歩とこちらへ近づいてくる。
気がつけばもう目の前。
私が後ろへ下がろうとすると腕の中に引っ張られた。


「え!?ととと歳兄!?」

「本当の兄貴じゃないからな。これからは堂々と一人の男としてお前のことを心配する。」

「え!?!?!?!」

「俺だって、お前のこと、妹だなんて思ったことねぇんだよ。」



惚れさせてやるから覚悟しておけ。


そんな言葉が耳元におりてきて。


私はあっという間におちてしまった。










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