決めたのです!
出会った瞬間に。


私の嫁にすると。


―積極的彼女 斎藤編―



さらりと流れる黒髪。
眼鏡で隠しきれない綺麗な青い目。
クールビューティとはこの人の為に作られた言葉だと思ってる。
いや、絶対そうだ。


「何かついているのか?俺の顔に。」

「いえ!360度、どの角度から見ても何の問題もありません!!!」


私の言葉に嘘偽りはございません。


でも目の前の人は怪訝な顔で私を見つめる。
そんな顔も素敵です!
じーっと見つめているとふぅと小さくため息をついて斎藤さんは目の前のノートに視線を戻した。


スラスラと流れるようにペンが動いている。
私はすでに放棄した数学の問題がまるで始めから書くことがわかっているかのように止まることなく解かれていく。


文武両道、眉目秀麗って言葉も多分斎藤さんの為に作られた言葉だ。間違いない!!!

こんな素敵な人がまさかいるなんて思ってもいなかった。
この高校に入って良かった。


二年生までは遠くから見ることしかできなかったけど、三年になって初めて同じクラスになった。このチャンス逃したら一生後悔する!と思って、毎日がんばって話しかけて。


やっとこうやって二人でも話せるようになったんだ。


「あんたは課題終わったのか。」

「まだです。」

「こちらを見ていないで速く手を動かせ。」

「こんな問題より斎藤さんを見ていたいのです。」

「何故。」

「私の理想の嫁だからです。」

「…。」



あ、斎藤さんのペンが止まった。
私が嫁と言う度に斎藤さんの動きは止まる。
最初は理解できぬと言われたけど今はだいたい流される。


「…俺は男だ。嫁にはならない。」

「そういうことじゃないんですよー。」

「だが、あんたを嫁にすることはできる。」





え?



私が…


斎藤さんの…


嫁!?!?!?!?!?!?!?







「はやく課題を終わらせろ。」

真っ赤な顔をした斎藤さんが目を逸らして私に告げた。

「え?いや…あの。」

「終わったら…一緒に帰らないか?」

「あ…はい。」


突然の告白に魔法がかかったように私の手は課題を始めた。
何故かいつもより早く終わって、帰り支度を始めると斎藤さんが手を差し伸べて立っていた。



「…帰るぞ。」

「うん。」


差し出された手を握り、立ちあがると斎藤さんは笑っていた。


「くくっ…顔が赤い。」

「う…。」



なんだか調子が狂う。
だっていつもは私が見ているだけで赤くなるくせに。




「やっぱり私の嫁は最高だぁ!!」

「なっ!?」



悔しくて思わず抱きついた。
すると斎藤さんはいつもみたいに赤くなるから。
嬉しくて力をこめて抱きしめた。



だいぶ時間がたってから私の背中に斎藤さんの腕がまわってきたときには、形勢逆転、私が赤くなるんだけど…。
見られたくないから斎藤さんの胸に顔を埋めることにする。








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