斎藤さんの場合


 「うぅ…お腹痛い。」


どうして女にだけこんなものが毎月くるのだろう。厄介なことこのうえない。

これが子供を産むのに必要なこととはわかっていても、それでも子供をまだ産む気がない者にとって、そして痛みがひどい者にとって、拷問以外の何物でもない。



と、私は思うのです。


「なんでこんなにお腹痛いんだろう。」


半分泣きそうになりながらどうにか楽な体勢がないか布団の上を転がる。
もちろん手でお腹をさすりながら。



痛みのひどい日はさすがの土方さんも寝てろと言って仕事を休ませてくれる。

申し訳ないけど多分仕事与えられても何の役にも立たないと思うから甘えているのだ。


ゴロンと横になり、少し痛みが落ち着く体勢を見つけた私はそのままじっと動かないようにしていた。


すると廊下から足音が聞こえる。
しかも…走ってる?


――スパーン!!!


勢いよくふすまが開くとそこには。


声をかけることもせず勢いよくふすまを開けるなんて決してしなそうな人が立っていた。



「斎藤さん?」

「大丈夫か!?」

「え?あ、あの…。」

「先ほど総司から聞いた。腹痛で寝込んでいると。」

「まぁ…。」

「ひどい汗ではないか。そんなに悪いのならすぐに医者を!」


来た時と同じ勢いで今にも飛び出していってしまいそうな斎藤さんを必死で止めた。

「大丈夫ですよ!斎藤さん!!!」

「そんなに苦しそうにしていて何が大丈夫なのだ!もしも大病だったら…。」

「お馬です!お馬ですから!!!」



言わせないで。
恥ずかしいから。



気付いてください。
毎月のことなんだから。



すると私以上に恥ずかしくなったのか、斎藤さんの顔がみるみる赤く染まっていく。



「なっ…。」

「明日にはもっと楽になっていると思います。」


なんですかこの状況。
お互い顔を赤くして黙ってる。


そんな空気を変えるように、斎藤さんが私の布団の横に座った。


「寒くはないか?」


少し落ち着いたのか顔色がいつも通りに戻ってきている。


「はい。大丈夫です。すみません、ご心配おかけします。」

「気にするな。俺にできることがあれば何でも言ってほしい。茶でもいれてくるか?」

「あの…。」



言っていいかな?
こんなことお願いしていいかな??



「どうした?」

「お腹さすってもらえませんか?」

「っ…承知した。」


一度落ち着いた斎藤さんの顔色がまた赤くなる。
ゆっくりと寝ている私に近づき、お腹に手をあてると優しくさすってくれる。


不思議なんだけど。
自分でやるより人にやってもらうほうが気持ちいい。


「痛むか?」

「でも…斎藤さんが…してくれるから痛くない…。」


あれ?
なんか眠くなってきた。


斎藤さんがいることの安心感かな。
お腹の痛みも和らいできたし。


斎藤さんの姿がぼやけてくる。


寝たくないのに。


「さいと…さん。」

「俺はここにいる。ゆっくり眠るといい。」

「はい。」


お腹の上にある温かさを感じながら。

私はゆっくりと眠りについた。



夢の中でもあたたかいものに包まれている感覚があって。
幸せな気分でした。


 「ん。」


目が覚める。


 「!?!?」


声がでなかった。

目の前に斎藤さんの顔があった。

どうやら私の横に寝転がってお腹をさすっていてくれていたらしい。
しかも斎藤さんもいつの間にか眠ってしまったのか、すやすや寝息をたてている。


(どうしよう?)


私が動くと斎藤さんも目を覚ますだろう。

毎日忙しく働いていて、非番の日でさえゆっくり休んでいるところを見ていない。

きっとこうして昼寝をするのもだいぶ久しぶりなんじゃないかな。

それを考えると起こしてしまうのは申し訳ない気がする。



斎藤さんの無防備な寝顔を見るなんて、よく考えてみたらありえないことだ。

せっかくの貴重な時間を私はゆっくりと味わうことにした。

しばらくして目を覚ました斎藤さんは。

瞬く間に顔が赤くなり。

それはそれはとても可愛いものでした。









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