妄想男子8



「…なんでだよ。なんでなんだよ。」




お昼御飯を食べていると、横で平助が頭を抱えていた。
悲痛な声に少しだけ気の毒になる。



ほんの少しね。ちょっぴりね。




「元気をだせ、平助。お前ならできる。」




「そうだよー平助君ならぴったりじゃない。」



もくもくと弁当を食べていた一とカフェオレを飲んでいる総司が笑いながら平助を慰めていた。




「うるせえよ!他人事だと思って!」


「そうでもないよ、僕と一君だって今から話合わないといけないんだからね。」


「俺はそのような役は似合わない。総司はぴったりだろう。」


「そんなことないよ。一君のほうが似合うと思うな。…かぼちゃぱんつ


「何か言ったか?」


「ううん、何も。」




いや、聞こえたよ。かぼちゃぱんつ。
総司はただそれが見たいだけでしょ?
ってかむしろ面倒だからやりたくないだけでしょ??







文化祭の季節が近づいてきて私達のクラスも出し物をすることになった。
普通お化け屋敷とか、カフェとか。
そんなことをやるもんだと思っていたらまさかの劇!!!
しかも白雪姫。
オリジナルでもなんでもないっていうね。





まあいいんだけどね。
私はちなみに小人の一人。


「なんで俺が白雪姫なんだよー!!」


あ、平助が叫んでる。


「だって仕方ないじゃない。投票で決まったんだもん。」


「普通女の子がやるじゃん!!」



確かにそうですけど。
王子役の候補に総司と一があがっちゃったもんだからさ。
女の子が白雪姫やったら顰蹙を買うじゃない。
ということで、一番可愛らしい男子、平助に票が集まっちゃったんだよね。




「決まったことは仕方がないとして。問題は俺と総司のどちらが王子役をやるかということだ。」


「流したよね、俺の悲しみあっさり流したよね、一君。」


「だから、王子様っていえば一君でしょ。似合うもん。」


「総司も無視かよ、もういいよ…。」



あ、平助がいじけだした。
でもそれすら二人は華麗にスルー。


「何故王子といえば俺なのだ。総司は女子からよく王子様見たいでかっこいいと言われているではないか。」


「一君も言われてるんだよ。気付いてないだけで。それに…豆腐の国の王子だし。」


「ぶはっ!!」


平助がいじけながらもぐもぐ食べていた焼きそばパンをふきだした。


「げほっ!ごほっ!そっそーじ…。」


「??どうした、平助。」




え!?
この近距離で聞こえないなんてどういうことなのよ、一!
いつもよく聞こえてるじゃん。
何?総司の魔法!?


「なんでもないよ、一君。でもどうやって決めようか?」


「そうだな…。そうだ、平助が決めればよい。お前が白雪姫なのだから。」


「へ?俺???」




え。
平助が決めるの!?
王子様を???



…女の子なら幸せな選択なんだろうけど平助からしたらどっちでもよさそうだよね。


「いや、どっちでもいいし。」



ほらやっぱり。


「ほんとに?自分が結婚する相手だよ、平助君。相手は慎重に選ばないと。」


「いや、劇の話じゃん。どっちでもいいって。」


「じゃあ想像してみなよ。どっちがいいか。はい、目つぶって―。」




はい、目つぶります!
妄想いや、想像想像。



えーっとじゃあまずは一が王子だったら??

「なんと美しい姫…。」

姫を見つけた一王子。
それを取り囲む小人たち。

「王子様!お姫様を目覚めさせてください!!」


「承知した。だがどうすればいいのだ?」


「キスで目覚めます。魔女の呪いがとけるはずです!!」

「キッ…キス!?」


「王子様!はやく!」


「王子様!!!」


「しっしかし、人前でそのような!」


「王子様、姫様のためです!」


「わかった。」




そして一王子は姫に近づき…。





















離れた。

















「やはり人前でなどっ!!!」

「王子様〜〜〜〜(呆)」








――――――――――――――――――――


「みたいな感じになりそうだよな、一君。」


「ぷっ…いつまでも目覚めないじゃない。白雪姫。」


「さすがに俺も劇ではそのようなことはしない!」



うん。でも一は確かにそんなことになりそうだよ。照れちゃって先に進まなそう。
まぁ、それに喜ぶ女子が何人もいそうだけどね。





「えーっと総司は。」






―――――――――――――――――――――




「姫…チュッ。」


「王子様…。」


総司王子のキスにより目覚めた白雪姫。
喜ぶ小人たち。

「わあ!姫様が目覚めた!!」

「ありがとう王子様!」

「やった!姫様〜〜〜。」


姫に集まろうとする小人たち。
しかし姫の前に立ってそれを阻止する王子。



「???」


「姫に触らないでくれるかな??」

「なんでだよ〜!!僕達は姫様が大好きなんだ!」

「姫様と久しぶりにお話したいよ!!」


「…あまり騒ぐとみんな殺しちゃうよ?」


「「「!?!?!?!」」」

「ええええ!!??」

驚きすぎて声もでない小人たち。
思わず叫ぶ白雪姫。

「さて、まずはお城に戻ろうか?君をこんなめにあわせた魔女を倒さないとね。もちろんすぐには楽にしてあげないけど……。」



そう言うと王子は姫を横抱きにし、城へと楽しそうに向かっていきましたとさ。







―――――――――――――――――――――











「怖えーよ!!!総司まじで怖え!」



どんだけ本当は怖いグリム童話だよ。
そんな怖い王子聞いたことないよ。


「あのさ、僕どんだけ悪い人になってるの?一度たりとも平助君をいじめたことないのに。」


「…日ごろの行いなのか、前世の行いなのか…。」


「前世なんて覚えてないよ!何、一君何か知ってるの!?」


「うぅ…もうどっちもやだよー。ってか白雪姫やだよー!!!」

「ちょっといいか??」





あれ、山崎君。いつの間に。



「白雪姫とはいえ少しはオリジナルを入れようと脚本担当の君菊さんが言ってる。」



「オリジナル??」

平助が目を丸くして山崎君の話を促した。
私も気になる。そんな話聞いてないもん。


「王子は二人だそうだ。沖田君、斎藤君頼んだぞ。藤堂君は完璧に女装させるとメイク担当が張り切っていたから期待してくれ。それでは。」




山崎君は監督だったっけ??
要件だけ告げると彼は席に戻っていった。



「……。」

「……。」

「やだーーー!!!!!」




なんだか結局三人が大変な役になったけど。
舞台に出るより客として劇を見たくなった私は、衣裳係の子と役を交換できないか交渉をしようと考え出した。




今から楽しみで仕方がない!!!
妄想がとまらない〜〜〜〜!

ごちそうさまでした!!



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