思い出C彼と海
青い空、青い海。
これぞ夏!!!って感じのロケーションに思わずわくわくした。
部活の合宿で海の近くに来ていたんだけど今日は一日自由時間。
マネージャーは私だけだから女の子が他にいないのはとても残念だけどこうして海に来られただけで夏休みって感じがする。
「海いいいい!!」
「おい、平助。少しは準備運動をしてから…うっ!」
「はいはい、一君。少しずつ水をかけていかないとねー。」
「…総司!!」
早々と着替えたみんなが海に向かって走っていくのを見て自然と頬が緩むがわかった。
剣道部のみんなは運動神経がいいのか、泳げない人は誰もいないみたいだ。
浮き輪を持っているのは私だけ。
少し恥ずかしいけどいいよね。
水着の上に着ていたパーカーをぬごうとした時だった。
「おい、どうした?泳がねえのか?」
「あ、原田先生。」
「浮き輪もって突っ立ってるからよ。泳げねえなら教えてやろうか?」
「え…!?」
そうやって笑う原田先生が眩しい。
実はずっとずっと憧れているなんて誰が言えるだろうか。
教師と生徒ってだけで壁が高いというのに相手はあの原田先生。
うちの学校でも一位、二位を争うイケメン先生だもん。
それに比べて私は…。
「おい、どうした?気分悪いか?」
「え?あ、いえいえ。」
「熱射病になっても困るからな。よし、ちょっと来い。」
「原田先生!?」
先生はそう言うと私の手をひいて歩き出す。
海とは逆方向にぐんぐんと進む先生に私は慌てて話しかけた。
「あの!先生!大丈夫ですよ。」
「いいからいいから。ほら、ついた。」
「海の家?」
「ジュースでもアイスでも何でも買ってやる。…お前だけな?」
あいつらにバレたら高くつくからなーなんて笑ってるけど。
お前だけって言われたのが嬉しくて私は顔が熱くなるのを感じた。
だって、特別みたいなんだもん。そりゃ女の子が私しかいないからかもだけど。
「何がいい?」
「えっと、じゃあカキ氷食べたいです。」
「いいな。…おじさん!カキ氷とラムネ一つずつ!」
原田先生の注文に笑顔で応えたおじさんがすぐにカキ氷を作ってくれた。
海の家のベンチで二人並んで座る。
少し離れた海を眺めるとみんなが楽しそうに泳いでいるのが見えた。
どうやらこっちには気づいてないみたい。
「なぁ。」
「はい?」
「一口くれ。」
「え!?」
そう言って原田先生は私の手を引っ張り、スプーンを口に含んだ。
突然の出来事にまた顔が赤くなる。
「うまいな。」
「は…はい!!」
「どうしたんだよ、変な奴だな。」
クスクス笑う原田先生がとてもかっこよくて。
心臓がバクバク煩い。
これじゃ先生に聞こえちゃうんじゃないの?
落ち着いて、私。
「わ…私も泳いできます!ご馳走様でした!!!」
急いで食べたカキ氷の味はよくわからなかった。
恥ずかしくてこの場を離れたくて、私はそう言うと立ち上がって海へ向かおうとする。
「ちょっと待て。」
「先生?」
私を引き止めるように腕を掴んで立ち上がる原田先生。
「…泳がないって選択肢はねえのか?浜辺で遊ぶとか、ここにいるとか。」
「泳がない…ですか?」
「海に来ておいてそれはねえって思うかもしれねえけどよ。」
「えーっと…浮き輪があれば大丈夫ですよ。そんな沖に行くつもりもないです。」
「そうじゃねえ。」
掴まれている手が熱い。
先生の顔が少し赤いのは気のせいかな?
「俺が…嫌なんだよ。お前の水着姿、あいつらに見られるの。」
「え?」
「だから…ここにいてくれ。頼む。」
「先生、それって…!」
―俺にだけ、見せてくれよ。―(先生!私…前から…。)
(その続きは俺に言わせてくれないか?)
(っ!?)
(卒業するまで寂しい思いさせるかもしれねえけど…俺の女になってくれ。)
(はい!!!)
(へぇ、二人で楽しそうですね。僕も食べたいなーカキ氷。)
(俺は焼きそば!!!)
(俺も何かいただいていいですよね、原田先生。)
(!!お前らいつから!?!?)
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