―沖田さんを祝え!―
どうしたら沖田さん喜ぶかな?
ここ数日はそのことばかり考えていた。
何故か私が幕末にトリップしてから半年が過ぎた。
最初は早くもとの時代に戻りたいってことしか考えてなかったけれど。
今は帰りたいどころか。
ずっと彼と一緒にいたいって考えてしまう。
「どうしたんだ、ぼーっとして。」
縁側で袴に包まれた足を投げ出して茜色になる空を見ているとふいに声をかけられた。
「あ、左之さん。」
「何かあったか?」
「ううん。今どうすれば沖田さんをびっくり、かつ喜ばせることができるかなって。」
「総司を?」
「この前沖田さんが言ってたんです。僕はけっこう暑い日に生まれたらしいんだよねって。つまり夏生まれでしょ?お祝いしなきゃ。」
「お祝い?」
「150年ぐらい先の未来はお誕生日をお祝いするんですよ。」
「へぇ。そんな習慣になるのか。」
「はい。だから突然お祝いしてびっくりさせたいのですが…。あの沖田さんを驚かせる方法が浮かびません。」
「ははっ。確かに総司を驚かせるのは難しいな。だけどなぁ。」
「?」
「お前が祝ってくれるだけでいいんじゃねぇか?総司は幸せだなぁ。」
「え?!いや…そんなことは。」
幸せも何も私が一方的に思っているだけですけど!!
ってか左之さん、私の気持ち気付いてる!?
「ま、俺達ができることといえば…。」
「はい?」
「一つしかねぇなぁ。」
にやりと笑いながら私の手を引っ張る左之さんについていくことしかできなかった。
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