「さぁショーの始まりだぜ!」
「どうしたの?いきなり。」
「あ、千鶴ちゃん。気にしないで。未来の気合いの入れ方だから。(私だけだけど)」
広間にはいつもと違ってご馳走が並んでいる。沖田さんや平助君が買ってきてくれたお酒もある。
準備が一通り整って、千鶴ちゃんと座り込んだところだった。
沖田さんや平助君も座っている。源さんも間に合ってよかったねと微笑んでくれていた。
もう少しで近藤さんが左之さんを連れて帰ってくるだろう。
そんなことを考えていたら廊下から近藤さんと左之さんの声がしてきた。
ゆっくりふすまが開く。
「ただいま。主役を連れてきたぞ。」
「なんだ?どうしたんだ?」
「左之さん!」
「「「お誕生日おめでとー!」」」
みんなの声を受けて左之さんが目を丸くする。
多分まだ理解できていないようだ。
「今日は左之さんのお誕生日でしょ?未来ではね、お誕生日はみんなでお祝いするんだよ。だから今日はたくさん食べて飲んでね!」
私がそう言うと理解してくれたようで、左之さんは笑って席についてくれた。
「左之さん!うまい酒買ってきたんだぜ!」
「雪村君と頑張って料理もしたよ。たくさん食べてくれ。」
平助君と源さんが嬉しそうに左之さんを出迎えた。
左之さんは目を丸くしていたけれどすぐに微笑んでくれる。
「…おいおい。こんなにいろいろしてもらうなんて生まれて初めてだな。」
「あ、もうすぐね、綺麗な人もくるみたいだよ?」
「綺麗な人?」
左之さんが目の前の料理に手をつけはじめた時だった。
「失礼します。」
廊下から声がした。そしてふすまが開く。
「あんた・・君菊さんか?」
「へぇ。お久しぶりどすなぁ。」
「あ、君菊さん!どうどう?あれは。」
「完璧どす。」
そう言って君菊さんが視線を廊下へうつす。
人影はあるのだがなかなか入ってこない。
「もー。はやく入ってきて!」
私は待ちきれなくなって廊下へ飛び出した。
が。
言葉をうしなった。
「…綺麗。」
綺麗に化粧されているのは土方さんと斎藤さん。芸者の恰好をしている。
正直・・女の人みたい。
もともと綺麗な顔立ちだから似合うとは思ってたけどここまでとは。
女の私より綺麗。完全に負けです。
「…やはり無理だ。」
「斎藤さん抱きしめてもいいですか?」
「こっ断る。」
「おい。本当にこれであいつらの前にでるのか。」
どんなに睨まれても綺麗過ぎて怖くないですよ。土方さん。
「武士に二言は?」
「…。」
「あれ?新八さんは?ぶっ!!!」
土方さんと斎藤さんが綺麗過ぎて気がつかなかったがその後ろに新八さんがいた。
もちろん。
芸者の恰好で。
「あはははははは!やばい!死ぬ!息できなくて死ぬ!」
「なんで俺がこんなことを!」
「永倉はんだけはどうしても難しゅうて。これが限界どすなぁ。」
「いや、いいです。大丈夫っ…くくく。」
廊下の騒ぎが気になるのか沖田さんや千鶴ちゃんが顔を出す。
「どうしたんですか…!?!?」
「あれ、まさか。土方さん?」
「トシ!?そして斎藤君!?いやぁ…あまりに化けてて気がつかなかったぞ。」
「一体どうしたんだ…!?どどどどうした!?その格好は!」
左之さんは目の前の三人の変わりように目をぱちぱちさせている。
「綺麗なお姉さんにお酌してほしいけど。何人も呼べないし。だから誰かになってもらおうと思って。」
「だからってお前。新八だけはありえないだろ。」
「どういう意味だよ左之!」
「そのまんまの意味だ!俺や斎藤だってありえるか!」
「いや、二人は以外と店に出ても気づかれなそうだぞ。」
「…ほめられている気がしないのだが。」
斎藤さんの一言に、みんなこらえきれなくなったのか大爆笑が起こった。
芸者の恰好をした三人も加わり、やっと宴会が始まった。
君菊さんもいてくれてなんとか場の雰囲気が盛り上がる。
お酒がすすむと新八さんがノリノリになってきて男らしすぎる舞を踊り始めた。
いやー。がっつり新宿2丁目ですね。
平助君も一緒に踊っている。
沖田さんは土方さんと斎藤さんを私のカメラでがんがんとっていた。
あれ、あとでネタにするんだろうなぁ。
千鶴ちゃんや源さん、近藤さんは三人で和やかに話している。
そんなみんなを左之さんは楽しそうに見ていた。
その顔を見て。
あぁ。やって良かったなって思えた。
今まで誕生会は自分のも他人のも経験しているけれど。
こんなに楽しくて、充実しているのは初めてかも。
だってみんな楽しそう。
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